クリニックの目標の続きです。
ドクターだけでなく新しいスタッフも大幅に増員する予定です。
それに伴って新人教育面でシステムの確立が急がれます。
我々昭和生まれにはとても難しい分野です。
何しろ今までマニュアルなどというもので学んだこともなく、カリキュラムなどというシステムで教育されたことのない世代ですから。
しかしそんなことを言っていては、平成が終わって令和の時代になった今では通用しません。
ここは教育専門家の力を借りて、今の若いスタッフがスムーズに学んでいけれるシステムを作っていきたいと考えています。
私が具体的に教えられるのは、せいぜい手術のエッセンスだと思っています。
それも、そんなに多くもなく今この記事内で書けてしまうぐらい単純なものです。
瞼なら「挙筋腱膜」「CPF」、鼻なら「鼻中隔軟骨」「鼻翼軟骨」、フェイスリフトなら「SMAS」「リガメント」
これらの解剖学的な組織を正しく理解し、手術時に確実に同定できること、これだけです。
これらはどんな状況にぶちあたったとしても、正しい手術の方向性を示してくれる指標だと思っています。
もちろんこれだけで手術が自由自在にできるようになるわけではありませんが・・・。
令和で通用する教育カリキュラムの確立が急がれます、汗、笑。
溶ける糸について、術後の経過でどのようなことが起きているかを前回書きました。
ここ3回の記事に「怖いもの知らず 知らぬが仏」というふざけたタイトルを付けた理由を書きます。
巷ではやりの糸リフトですが、切らなくてもたるみの解消ができるという点で人気の手術になっています。
ベテランの患者さんでも好き好んで切ってほしいという人はいないと思います、できれば切らないで希望をかなえたいと思うのが普通です。
つまり患者さんは「切る手術」はリスクが高い、怖いと考えがちです。
ただし、一般的に「切らない手術」は一種の盲目的手術で医学的にはかえってリスクがあると考えられます。
なぜなら皮膚の下になにがあるかはっきりわからないで糸を挿入する、というのはそこに何があるかをぼんやりと想像しながら行う手術だからです。
その想像が正しければいいのですが、もし少しの違いがあったら大変なことになります。
特に顔面は血管や神経の塊のような場所ですので、1㎜でも間違った場所に糸を入れると重大な結果を招きます。
我々は、実際にフェイスリフトの手術で皮膚の下の解剖を目の当たりにしながら目で直接確認しながら手術をしていますのでこのような間違いを犯すリスクはかえって少ないのです。
実際に過去に挿入された糸をフェイスリフトの手術に確認すると、顔面神経すれすれのところに挿入されていたりそれに絡まっている状態の糸を確認できることは日常茶飯事です。
こういった場面で思うのは、つくづく現実を知らないってことは怖いことだし、逆に知らないからこういったことが平気でできちゃうんだ、とある意味感心しています。
「見えない」「見ない」ことにする、ということは人間にとって安心できる源なんですね~。
私のように目で見えていても最後までほんとに大丈夫なのかと心配しながら手術をするような小心者には、こういった盲目的な大胆な手術は怖くてとてもとてもできません!
怖いもの知らず、知らぬが仏
Ignorance is bliss
実際に挿入された溶ける糸がどのようになっているか、について
患者さんは、泡のようにきれいに消えてなくなる、というイメージをお持ちかもしれませんが、全く違います。
糸自体はそれとなく残っていて、フラグメント化(細片化)しているところが溶けない糸と違う点です。
なぜこのようなことがわかるかというと、我々のクリニックでフェイスリフトを受ける患者さんの多くが過去にこのような糸リフトを受けていることが多いからです。
以前にも書きましたが、当クリニックではフェイスリフトの手術において徹底的にSMAS弁を起こしています。
顔面神経が見えるか見えないかぐらいの深さでなおかつ顔面の前面まで剥離しますので、過去に受けた手術でどのようなことがなされてきたかほぼ丸わかりになります。
糸についてもどのような材質のものか、挿入の深さや方向まで全部わかります。
ですから術後どれくらい経過しているとどのような変化が糸に起きているか直視下に見て知ることができるのです。
その経験から、溶ける糸が泡のように消えてなくなるのではないことがわかっています。
したがって溶ける糸は消えてなくなるから安心、というのはちょっと違う気がします。
詳しくは次回に
時々、糸リフトについて聞かれます、いったいどうなんですか?効果はあるのですか?
我々のクリニックでは巷でいう「糸リフト」は行っていません。
ですからここで書く内容については偏見があるかもしれません。
ただし、特殊な糸リフトはよく使用しています、いやむしろフェイスリフトの手術ではほぼ全例に糸リフトを併用しています。
あくまで補助的な使用ですが、効果が大したことない、という意味で使っているのではありません。
とても重要な役割があると思っていて、それについては過去の美容外科学会のシンポジウムで何度となく発表してきています。
ここでは、そのような特殊な糸ではなく巷で使用されている糸についての意見です。
まず、溶ける糸と溶けない糸、どちらがいいのでしょうか?という質問です。
正直どっちでもいいです、何故なら同じような効果とリスクだからです。
患者さんの中には、溶ける糸は安心という人もいるでしょうがそれはちょっと違うと思います。
これは美容外科医(美容皮膚科医)でも勘違いしていることかも知れませんので、実際に挿入された糸がどのようになっているかを説明したほうがいいと思います。
続きは次回で
先日患者さんから問い合わせがありました。
「フェイスリフト」を他院で受けたのですが、手術時間が短かったので本当にSMAS処理をしているか不安です、とのことでした。
正直、手術中のことは術者にお伺いしないと本当のことはわかりません。
以前ブログで書いたことがありますが、手術時間は一つの参考にはなります。
SMAS処理は、顔の深いところの処理が必要で前方までかなり剥離します。ここに横たわっている数本の顔面神経を常に意識して手術をしなければいけませんのでここだけでも相当時間がかかります。
ただし、世の中には「神の手」が存在しているかもしれません(そんなものはないということは医者はわかっていますが笑)ので、2時間以内でSMAS処理をしたフェイスリフトがあると信じたい患者さんの気持ちもわかります。
うちのクリニックでは、最近フェイスリフトの手術では、SMAS処理とシルエットリフト糸による処理が終了したところで写真を撮ることにしています。
傷を閉じてしまうとこれらは二度と見ることはできませんので記録として電子カルテに貼り付けて保存しています。
今後もしフェイスリフトを受けようとしている患者さんは、術中写真を撮っておいてもらうことを主治医にお願いしてみたらいかがでしょうか。
ちゃんと処理をしている術者なら快く引き受けてくれると思いますよ。
それとも「神の手」による手術は写真には写らないかもしれませんが・・笑
最近うちのクリニックでは鼻の手術を受ける患者さん、瞼の手術を受ける患者さんも術中写真をとってそれぞれ軟骨移植の状態、挙筋腱膜の処理の状態を記録にとってカルテに保存しています(こういった点電子カルテは本当に便利です)。
術後検診の時に術中の写真をお見せすることはできますのでお気軽にお申し付けください。
今回は
ゆがんでいるとも思える美容外科広告事情に少しづつ光明が差してきた、という話です。
結論からいうと個人の情報発信、美容外科でいえば患者さんの情報発信です。
実際にクリニックで手術や施術を受けた患者さんが情報を発信し始めたのが今から10年ぐらい前からです。
文章(ブログなど)、写真(インスタグラム)、動画(ユーチューブ)などいまや誰でも情報発信することができる環境が整っています。
うちのクリニックでいいますと
2014年に大阪のブロガーがうちのクリニックで鼻の手術をうけました。
その患者さんは、自身のブログで術後1日目から顔の状態をほぼ毎日写真付きで克明にアップしてくれて、多くの患者さんがそれを見ることでうちのクリニックの存在を知ることになったようです。
それまで、うちのクリニックで行われている手術の宣伝はHPこそ作ってはいましたが、前回記事のような検索エンジン対策はほとんどせず、もちろん上位に表示されることなくほとんどの患者さんに存在を知られていない状態でした(それは今でも変わらないようです笑)。
その患者さんもほかのクリニックで手術を断られたのでたまたまうちのクリニックで手術をうけることになったというのがいきさつです。
その患者さんの手術後半年ぐらいから鼻の相談と手術が激増して、一番忙しいときは1週間毎日7~8時間の手術が続くようなこともあったぐらいです。
なかにはカウンセリングまでに3か月、手術はさらにそれから3か月待ちという時もあったようです。
さすがに5年も経過するとその患者さんの影響力もなくなってしまいましたが、今でも時々見たことがあるという患者さんがおられます。
さらに最近では、去年フェイスリフトと目・鼻の手術を受けた患者さんが術後の詳細をブログにアップしてくれて特にフェイスリフトの患者さんが激増しました。
以前からフェイスリフトについては、学会に何度も発表していて美容外科医の中では少し知られていたぐらいでした。
その関係で、それまではフェイスリフトを受ける患者さんは美容外科医(女医さん)が多く、その女医さんからの紹介で時々一般の患者さんもフェイスリフトをうけていただくことが多かったようです。
私にとってはずっと当たり前のように行ってきたフェイスリフトの方法が、自然な仕上がりで患者さんからの評判がよく去年の患者さんも率直な感想を書いていただきフェイスリフト患者さんの激増につながったようです。
鼻の手術もフェイスリフトの手術も10年以上前から変わらない方法でおこなってきましたが、心ある患者さんに評判を広めてもらって、言ってみれば「発掘」されたような格好になっています。
このような患者さんを私は「エンジェル」と呼んでいますが、こういった方が情報発信することは日本の美容外科業界の発展に大きく寄与することにつながると信じています。
一方、患者さんの情報発信は光の部分だけではありません。
闇の部分については次回以降に!
前回の続きです。
ライブ中継に少し参加したときに視聴者の方からの質問がありました。とっさのことでいい加減な答えしかできなかったのでここに改めて答えたいと思います。
昭和生まれはどうしても活字にしないと落ち着かないんですよね~笑。
今回のライブは「フェイスリフト」というテーマだったようでそれに関しての質問が何個かありました。
①糸によるリフトで溶けない糸のデメリットは?
私は、「溶けない糸」で特別に問題になることはない、と答えました。これは比較論でお話しするとわかりやすいと思います。
「溶ける糸」と比較してどちらがメリット・デメリットが多いですか、と考えた場合どちらもメリットデメリットがあります。
まず「溶ける糸」のメリットは、異物がずっと顔に残らない、というのが一番大きいと思います。その代わりデメリットは効果がそれに伴ってなくなっていきます。
逆に「溶けない糸」のメリットは効果が長続きするが、異物が顔にずっと残っているのがデメリットということになります。
担当の先生がこの辺りを考慮しながら患者さんのご希望応じてどちらがいいかをお話ししてくださると思います。
②糸リフトのあとにフェイスリフトはできますか?
答えは、「できます」です。実際にうちのクリニックでフェイスリフトを受けた患者さんの2/3は、過去に何らかの糸によるリフトのご経験があります。
患者さんが前もって申告してくださる場合もありますが、手術すれば糸によるリフトの後は一目瞭然でわかります(その糸が溶ける糸であったとしても・・・不思議ですよね笑)。
③フェイスリフトは何回できますか?
この質問、実は先日の学会でもほかのドクターから質問されました。
そんなに気になる問題なんですねぇ・・。
自分なら、まず「先生のするフェイスリフトの効果は何年持ちますか?」が最初にでてきそうな疑問なんですけど・・。
答えは、自分が過去に行ったフェイスリフトのあとであれば、次もその次もできますが、ほかのドクターがおこなったフェイスリフトだとできない場合もあります。
その理由はかなり難しい説明になりますので省きますが、簡単に言えば手術というものは同じ手術名だったとしても内容はピンキリだからです。
自分でいうのもなんですが、うちでフェイスリフト受けた患者さんで今までに再リフトに来られた患者さんは極めて少ないです。
8年ぐらい経過して「少し緩んだ感じがします」と来院された患者さんがおられましたので、併用していた「溶けない糸」を再度牽引して余分な皮膚を少し切除したことはあります。
患者さんが最初から2回目3回目を考えなければならないのがフェイスリフトだとお考えならそれはなんとなくさみしいことですよね。
若返り手術の1番はじめにお話ししたことを思い出しましょう。
若返りの手術を考えるときに大事な2点「皮膚のテンションアップ」と「ボリュームコントロール」があることを書きました。
テンションアップの一つの方法のフェイスリフトについては多少なりともご理解できたとして、次はボリュームコントロールについて書いていきます。
老けて見える顔にありがちなのは顔の上半分のボリュームダウンです。
前額、こめかみ、下眼瞼から頬のボリュームが年齢とともに減少してきます。
これらの部分にも引き上げが必要なこともありますが、圧倒的にボリュームダウンが大きな原因になりますので解決方法はボリュームアップが第一選択です。
うちのクリニックでボリュームアップで使われている方法は脂肪注入です。
もちろん自分の脂肪を移植します。
女性の場合、かなり痩せている患者さんでも太腿とか臀部には余分な脂肪がついています。
脂肪を取らないでほしい、という患者さんもめったにいません。
その脂肪を吸い出して、オデコなどに注入しますよ、というと結構喜ばれます。
この方法のいいところは、患者さんに受け入れやすい、というところと結果に不満足が少ない、という点です。
これで学問的な裏付けが得られれば、かなり有望な手術手段になります。
従来から言われてきた一番の課題は、脂肪の生着率、残存率です。
最終的にどれぐらいの脂肪が注入された部位に残ると考えられるのか、それが問題です。
それについて次回以降に書いていきます。
*最近の記事は、形成外科研修を修了して専門医習得後、美容外科を始めようとしている医師に向けて書いています。
当クリニックで使っている糸は、強力な引き上げ効果を期待できる糸「シルエットリフト🄬、以下SL」です。
ですから、単独で使うことはありません。
理由は前回の記事を読んでいただければわかりますよね。
このSLが出たての頃、いろいろなクリニックで使われていたようですが、今やうちのクリニック以外で使われていることはほとんどないようです。
なぜなら、SLは単独で用いるには引き上げ効果が強力すぎて自然な結果を出しにくいからです。
SLも発売後、改良?がなされて糸が解けるタイプのものとか引き上げないタイプのものなどがあるようですが、私は解けない糸で引き上げタイプのものしか使いません。
ほとんどのケースが、フェイスリフト(FL)との併用です。
かれこれ10年ぐらい前からこのパターンです。
これによってFLの弱点をSLで補い、SLの弱点をFLで補うことができます。
FLの欠点は、たるみが一番気になるところの顔の正面の部分の改善力が弱いこと、
SLの欠点は、たるみの移動は可能だが解消はできないことです。
一方、FLの利点はたるみを切り取ることができること SLの利点は顔の正面に引き上げ効果を及ぼすことができること、です。
見事なマッチングだと思いますが、詳しくは過去の美容外科学会で発表してきましたし、論文にもなっています。
さらに10年ぐらいぶれることなくこの方法で行い、効果の持続も確認しています。
来る8月に行われる形成外科学会のパネルディスカッションでも術後9年間の患者さんの経過を発表する予定です。
最初にお話ししましたように、たるみ取りの手術の2つの要件は「たるみを引き上げる」ことと「その効果を持続できる」ことでした。
私の方法でこれを満たすことができることを10年かかって漸く証明することができたと思っています。
今回は、今はやっている「糸によるリフト」についてです。
まず美容外科の手術の大原則に戻ってみましょう。
「傷を小さくしたり、手術で手を付ける範囲を狭くする場合、効果を出せば出すほど不自然になる」でしたね!
これは若返りの手術にも当てはまることをずーっとお話してきました。
効果のある手術を期待するのであれば、SMASをきちんと処理して、皮膚剥離範囲も必要十分に行うことが大事です。
しかし「糸によるリフト」を考えてみると傷はほとんどつけない、皮膚を剥離する必要がない、など美容外科手術の原則に当てはまらないので、効果を期待してはいけない手術になってしまいます。
実際に「糸によるリフト」でトラブルになるとすれば、これで大きな効果を期待した場合(患者さんも医者も)に考えられます。
「心優しい」世の大部分の美容外科医は、私のように本当のことを言ってしまって患者さんの期待を裏切るようなことはしません!
「手術ほどの効果は難しいけれど、何とか糸でやってみましょう」と優しく対応してくれます。
最初は4本~8本、徐々に糸の本数も増えていきます。いつか本人が納得できる効果が「虹のかなた」に出るはずと信じて、気づいてみればなんと顔に100本の糸が・・・実際の話です。
なぜこうなってしまうのか。
よく考えてみればあたりまえですよね。大原則に戻って考えてみましょう。
まずフェイスリフトは「面」で引き上げるべき所を「線」で引き上げることによる問題がひとつあります。これは本数を増やせば「線」が「面」に近づいていくことでなんとかなるかもしれません。
もう一つの問題は、糸による引き上げは、たるみを移動するだけで皮膚切除をしていないので解消しているわけではありません。上に移動したたるみは必ず後戻りの原因になります。
結論は、糸単独でたるみ引き上げを考えると、かなりの本数が必要であることとたとえそれだけ本数を入れられたとしても効果は数か月で消えていく、という理論通りの経過になります。
こういったことをよく理解したうえで、それでも糸を希望される患者さんがおられれば糸によるリフトも悪くない、というのが私の考えです。