美容外科医として成功するには
これは日々の診療で「患者さんの信頼を積み重ねていくこと」と申し上げました。
実際は患者さんに嘘をつかないで約束を守ること、で言葉でいうと簡単なことですが、いざ実行しようと思うとなかなか難しいことです。
日常の診療で手っ取り早く売り上げを上げる方法を考えることがあると思いますが、それは本当に患者さんの期待する効果が出ることを約束できるかどうか考えたことがありますか?
その内容を客観的に正直に患者さんにお伝えして患者さんの判断に従っていますか?
これを毎日毎日行っていくと、短期的どころか中期的に売り上げは上がらないかむしろ減っていくこともあります。
それでもその方針を曲げずに患者さんの信頼を獲得するために嘘をつかず約束を守る姿勢を貫いていけるでしょうか。
自分自身の経験でいうと、5年ぐらいこれを続けていくと自分で自分のしていることがだんだん嫌になっていきます。
実際に自身で開業後に月間売り上げ過去最低を記録したのがこの時期でした。
その頃私は別の事業で成功していたので、金銭的に日々の生活に困ることは全くありませんでしたがやはり精神的にはさすがにへこみました(もし事業の成功がなければどうなっていたんでしょうね、笑・・・ひょっとしたらホームレス?)。
つまり、売り上げがないということは美容外科医として評価されていないことと同じだからです。
これはある意味、お金がなくて生活に困ることよりも美容外科医にとってはきついことかもしれません。
患者さんに美容外科医として期待されていない、となればやめるしかほかにないからです。
実際にこの時期、美容外科医を本気でやめようと思ったことがあります。
ところが不思議なことにそう思ったとたんに、いろいろな奇跡的なことが起こり始めいまの状況になるきっかけを何度か経験することになりました。
そのことについては過去にも少し書きましたので省略しますが、こういった体験について似たようなことをスティーブジョブズ氏の2005年スタンフォード大学での講演でも聞くことができます。
その中で「connecting the dots」という表現で言及していますが、ある一つの成功にはそれまでのいくつかの体験が一つ一つの点として結ばれておこるものであるが、それはあとになってわかるもので前もってはわからない、と語っています。
そして、その一つ一つの点は前もってわからないことなのでそれまでは自分自身を信じて体験を積み重ねていく他にないと言っています。
私の場合まさにその一つ一つの点が「一人一人の患者さんの信頼」ということで、それをくじけずに守り通してきたことが今のクリニックを取り巻く状況につながっている、と今になってようやくわかり始めたということです。
お金持ちになる確実な方法はそんなにむずかしくないゲームでした。
ところがこのゲームには勝者が圧倒的に少なくて敗者の多いゲームなのです。
どうしてでしょうか。
原因の一つとして考えられるのは、実は本当にお金持ちになろうと思っていない、というのがあります。
口ではみんな「お金が欲しい、お金持ちになりたい」というけれど、いざこうすればいいですよと道を示されると途端にしり込みしてしまう、人間は弱い生き物です。
しかしそれでも一部の勇気があり信念のある人は果敢にお金持ちへの道で挑戦を始めます。
ところがこの途中にもいろいろな足を引っ張る「誘惑」がいたるところに落とし穴として用意されて待ち受けているのです。
「そんなにけちけちしてないで今を楽しみましょうよ」とか「こちらの方が手っ取り早く金持ちになれますよ」とか、悪魔のささやきが聞こえてくるのです。
結局、お金持ちになるための道は実際に行うことは難しくない単純なことの繰り返しなのですが、それを継続していくことがあまりにも困難なのです。
だから「本当のお金持ち」になる人が極めて少ないのです。
さて、次回に本題の「美容外科医として成功する」ことを考えてみましょう。
形成外科専門医をもってこれから美容外科を専門に研鑽しようと思っているドクターに向けて、ここ1年近く実際の美容外科医の仕事についてブログを書いてきました。
少し退屈な項目もあるのではないかと心配していますし、一般のかたや患者さんの中には読んでも面白くないと感じている内容になっているかもしれません。
今日は少し視点を変えてお話ししようと思っています。
ずばり、美容外科医として「本当の成功」とは何か、についてです。
そして一般の方にそういった美容外科医を探すにはどうしたらいいかをお伝えできればと思っています。
そんなに難しい話ではありません。
美容外科医に限らずほかのお仕事で成功することと共通していることかもしれません。
それは一言でいえば「信頼の積み重ね」です。
それだけです。
簡単にいえば、人には嘘をつかない、約束はきちんと守る、ことです。
しかし実際にこれを何十年と守っていくのはかなりしんどいことです。
たとえて言います。
私の好きなお題目で「お金持ちになるにはどうしたらいいですか」というのがあります。
これは意外と単純で、最初は「種銭」を作り、そしてある程度資金ができたらそれを「投資」し、お金を生み出す資産(不動産、株式など)を獲得していきます、最終的にそこから生み出される不労所得が生活に必要な支出を上回れば「お金持ち」になれるわけで、一種のゲームのようなものです。
そこには頭のよさとか特別な才能は必要ありません。
今の資本主義の世の中で生活している人であればだれでも参加できるゲームであり特別な資格も必要ありません。
ではこんなにはっきりとした「正解」があるゲームなのに成功する人がそれほど多くないのはどうしてでしょうか?
長くなりそうなので続きは次号で。
仕事面における個人の目標
美容外科手術で一番関心を寄せているのが、脂肪注入における生着率アップです。
何度も書いてきましたが、生着率の計測が可能になったのでこれを利用して脂肪の残存率をいろいろな方法で比較できる状況になりました。
もちろん患者さんの了解を得たうえで患者さんに不利益にならないようにすすめて行きたいと思っています。
もう一つは、これから5~10年かけての後輩の育成です。
これには手術の技術面も含まれますが、もっと広い意味での美容外科について伝えていきたいと思っています。
これも何度も書いてきましたが、美容外科はとかく「手術で何をするか」に目を向けがちですが、患者さんのなりたいイメージや我々が目指すイメージのゴール設定が非常に重要であることを伝えていきたいと思っています。
それと美容外科クリニックの経営、これもいままで何度もこのブログに書いてきましたが、診療に大きな影響を及ぼすクリニックの経営方針と具体的なマネージメントについて
これは後輩に伝えるというよりは自分自身がこれからの10年磨き上げていかないといけない事項になります。
これは診療の質の維持と診療圏の拡大という美容外科でもっとも難しい難題がかかわってきます。
過去、この難題をクリアした美容外科クリニックはほとんどありません。
要するに美容外科を個人経営レベルからビジネスレべルに転換するときに医療の質をどこまで維持できるか、という問題です。
これには私一人の力では実現不可能で、多くのスタッフと医療関係者、外部からの協力者が必要です。
私の役目はそれらをまとめつつ、自分の理念を間違いなく伝え広げていくことだと思っています。
今までたくさんの記事を書いてきましたが、手術の価格についてはセンシティブな内容になりますので触れたことがありませんでした。
とくに日本の医療は100%社会主義国ですので、何人も平等に治療を受けられるのが当たり前という感覚が身についています。
そんな中でほぼ100%自費診療である美容外科は、どうしても色眼鏡で見られがちです。
私のような医療提供側が価格について述べるのは、どうしても患者さんにとっては不愉快な内容になってしまうのではないかという心配があります。
ですから、もし不愉快になりそうであれば読まないようにしてください。
私の価格に対する考えは、支払う側の満足度に対してその価格が適正かどうかだけです。
例えば、1万円を支払って不満足なものを買うよりも100万円出して満足なものを買った方が安いと感じるということです。
たとえ1円でも理不尽なものに払うのはいやだと思うのです。
ここまでは多くの人が感じていることだと思います。
難しいのは、満足できるかどうかは結果論でしかわからないことが多いことです。
私の場合、支払った後でその結果が不満足だった場合、二度と同じことはしないと思うのは当たり前ですが、その支払った料金はそれを知るための授業料と思うようにしています。
つまりその支払いをしなければわからなかった、支払ったからわかったことなので、一見失敗と思われた体験はそれだけの価値があったと思うからです。
美容外科の治療を受けることに当てはめれば、最初の治療でそこそこの支払いをしても満足できなかった場合、なぜ満足できなかったかをよく考えることがとても大事だと思うのです。
それを知ることができれば、二度と同じことはしないと思いますし次の満足体験に近づくことができます。
それはそれで結果的にとてもいい買い物ができたと思えるのではないでしょうか。
今回はクリニックの宣伝について書きます。
美容外科がほかの科のクリニックと大きく違う点の一つが「広告宣伝」です。
クリニック経営で、一番大きな支出を占めるのが宣伝費というクリニックが多いと思います。
普通の病院や診療所は地域医療をメインにすることが多いのですが、美容外科には地域医療という性格はほとんどありません。
美容外科の診療圏は極端にいえば全世界になります。
地域医療の場合、集客(集患者)には地域のコミュニティでの評判が一番重要で、その最たるものが口コミでした。
いい評判の病院診療所には患者さんが集まる、悪い評判がたつと患者さんが逃げていく、という単純な宣伝形態が働いてきました。
ところが美容外科は、上記の理由で従来口コミが役に立たないことが多く、代わりにあらゆるメディアを用いて情報発信することが宣伝のメインとなってきました。
20年以上前までは、雑誌、テレビなどのメディアが宣伝の中心でここにはクリニックの情報があふれていて、美容外科クリニックの来院患者数はこの掲載料や放映料と完全にパラレルでした。
もちろん医療の広告には医療法の規制がありますが、一方通行の情報発信ですからクリニックが好きなことを書いても大丈夫でした(例えばクリニックの独自な手術法、手術症例数日本一とか)。
20年前にインターネットが普及してからはメディアの中心が大きく変わりました。
情報発信の主体はネットになり、クリニックの情報発信はホームページ(HP)を作成することになります。
一見するとHP作成は一度行ってしまえば以後それほど費用が掛からないので広告費の割合は減少するかに思えました。
ところが、患者さんにHPを診てもらおうとすると検索エンジン(グーグルやヤフー)対策が必要となり、これに多額の費用がかかるようになってきました。
患者さんがあるキーワード(例えば「美容整形 名医」など)で検索して表示される最初の1ページの上位になるには多額の費用が必要になります。
クリニック側としては、ここに費用をかければかけるほどHPの閲覧される回数が増加し、来院患者数も増える、という従来の広告パターンと全く同じような構造となっています。
ネットのスマートなところは、患者さんにとって検索で上位に表示されるクリニックはあたかも人気のある優れたクリニックに思わせてしまうところです。
自分で時々興味本位で美容関連のキーワードで検索してみるのですが、業界では聞いたこともないクリニックが上位表示されていたり、どう見ても不自然な順位で表示されていることは日常茶飯事です。
グーグルなどは、患者さんに有用な情報を伝えるために検索のアルゴリズムを変更したり改善?したりするそうですが、果たしてそれがうまく機能しているのか全く疑問です。
こんな広告環境で、患者さんにとって有用な情報をお伝えすることが可能になっていくとはとても思えないのです。
そんな中で、美容外科にもやっとまともな情報発信手段が芽生えようとしているようです。
続きは次回以降で。
本当のカウンセリングが難しい理由のその2です。
最近は美容皮膚科全盛で、手術だけで美容外科を開業するドクターは少なくなりました。
しかし中にはいわゆる「肉食系美容外科医」というのもいて、とにかく手術が好きで誰よりもたくさん手術をしたい、というドクターがいます。
この手の肉食系美容外科医がすべて手術がうまいとはかぎりません。
むしろやや手術が乱暴なドクターが多いような気がします。手術は質より数だというのがそういったドクターの信条だからでしょうか・・またそうじゃなければたくさん手術できません。
そういったドクターに、本来のカウンセリングを期待するのは難しいと思います。
そのドクターのやりたい手術をぐいぐいとすすめてきますし、検診でも患者さんの言うことはあまり聞かないことが多いようです。
前回「手術請負美容外科医」が出てきましたが、今回のドクターは「手術押売美容外科医」とでも名付けられるかもしれません。
いずれにしても、患者さんの本当の希望をお聞きして客観的にベストと思われる治療を提案することの難しさ、またそれを客観的に検証することの苦しさは美容外科医が毎日直面する課題になります。
その対処法は、それぞれの美容外科医が考えて自分のスタイルを確立していくことが必要になりますが、今まで書いてきたようにカウンセリングはクリニック経営と密接に関係していることが多いので、自分自身が経営最終責任者にならなければ本当の意味でのスタイル確立は難しいと思われます。
本日で当クリニックは開業以来満10年を迎えることができました。
いろいろな方のご支援ご協力のもとここまで来ることができたこと、深く感謝したいと思います。
いろいろな意味で、このクリニックの存在は美容外科における経営の実験だと思ってやってきました。
チェーン店形態をとらないで、保険診療に頼らずに自由診療しかも手術中心の診療を中心にしながら、健全経営で10年間継続できるかどうか・・・
それが、10年前に私が考えていたことでした。
本日まで、紆余曲折は多少あったものの何とかやってこれたこと、大変うれしく思っています。
とにかく、美容外科の目的である、治療を受けた患者さんの心の満足を第一に、これからもこの治療方針を深めていきたいと思っています。
また今後は、さらに新しい試みを行っていく予定ですのでよろしくお願いします。
今年もよろしくお願いします。
今年最初の記事は、美容外科医向けに書こうと思います。
昨年からのマイブーム「幸福の資本論」、今日は人的資本について深ーく掘り下げます(笑)。
医師の人的資本は、一般的にとても高額です。
ちょっといやらしい話になりますが、稼ごうと思えばいくらでも・・・です。
特に美容外科は、医療の中でも医師としての人的資本が生かせる最高峰の一つと考えられています。
それなら美容外科医は全員幸福か?というとそうでもないのは去年にも書いたとおりです。
なぜか・・・。
人的資本が幸福をもたらす一番重要なポイントは、「仕事のやりがい」の有無だからです。
それは一言で言ってしまえば、他人への貢献(医療では患者さんの幸福への貢献)です。
美容外科では、施術によって患者さんに心からの満足感をもたらすことができたかどうか、が重要なカギです。
施術そのものがうまくできたかどうかも重要ですが、施術後ある一定期間患者さんに満足感を感じていただけたかどうかがとても重要です。
手術であれば、その期間が年単位にもなります。
それを知るうえでもっとも重要なものは、術後の患者さんのフォローアップです。
これをやらずして、どんどん手術なりレーザー照射をやっていくと、売り上げは一時的に伸びていきますが、時間的にフォローアップすることができなくなり、患者さんに本当の満足感をもたらしているかどうかわからなくなります。
ここが、美容外科医の一番陥りやすい罠です。
医師自らが術後の検診をまめに行うことは、経営的に最も効率が悪いことになります(通常美容外科で術後検診料を取るところは珍しいからです)が、ここをおろそかにすると自分のおこなった医療行為の患者さんの幸福への貢献は全く分からなくなります。
術後検診は、患者さんのためにというばかりでなく、むしろ自分の医療行為が本当に患者さんに貢献できたかを知るうえで医療側からも重要となります。
術後、それほど満足できなかった様子の患者さんがおられたとしてもそこから我々はとても重要なことを学ぶことができ、患者さんの満足感を増やす努力をするうえでヒントになるとかんがえられます。
長々と書いてきましたが、美容外科の仕事の目的として患者さんの満足感に貢献できたかどうか、そこだけを目指して仕事を進めることができれば、医師の人的資本を最大限に活用したことになり、美容外科医自身の幸福にもつながるのではないかというのが私の考えです。
前回の記事で書きました「本」の内容をもとにもう少し書きます。
きっとほとんどの人が読んでいない(笑)と思うので内容についても掻い摘んで書いていきます。
幸福の定義は難しいところもありますが、各人がそれぞれの幸福を思い描いて一時は手に入れたと思っても、その基本構造、人生の土台といったものがしっかりしていないとすぐにその幸福は崩壊してしまうもの、というのは皆さんの経験からも思い当たる節があるのではないでしょうか。
その土台にあたるものが、その人が持つ金融資産・人的資本・社会資本の3つ、というのがこの本の言わんとしているところです。
一つ一つはなんとなくわかると思いますが・・・
要するに金融資産というのはお金にまつわるもので、しかも働かなくてもいいぐらいのお金を生み出す資産を言い、人的資本はその人自身のお金を稼ぐ能力、社会資本は家族や友達・親せきなど目に見える、見えないにかかわらず人生の幸福をもたらす人間関係、といえます。
私の考えでは、この3つの資本・資産は非常に密接に関係してるとおもいます。
例えば大金を稼ぐ能力がある人でも、やりたくもない仕事をやらされている人(感じている人)は幸福を感じにくいと思います。
人的資本で幸福を感じるのに一番重要なのはいわゆる「仕事のやりがい」であり、どれだけその仕事が好きか、に関係してきます。
働かなくても生活できる人(金融資産が十分な人)は、好きなことを仕事として選ぶことができ、全人的資本をそこに集中投下できます。
その結果、人的資本で幸福を感じることができた人は、心の余裕・時間の余裕に恵まれ家族や仕事仲間など社会資本にも恵まれやすくなります。
金融資産・人的資本・社会資本の三つを全部持っている人は極めてまれである、と本書では紹介されていますが・・・。
この話を我々美容外科・美容医療業界に照らし合わせてみます。
「美」は一つの人的資本です。
反論もあるでしょうが、美人のほうが得をするチャンスに恵まれている、といわれていて、実際に美人のほうが(男女問わず)生涯年収が高いというデータがあります。
お金持ちの人と結婚できるチャンスも高いかもしれません。つまり社会資本にも金融資産にも恵まれる可能性が高い、といえます。
金融資産に恵まれれば、さらに「美」に磨きをかけることができ、好循環が生まれます(人生の伴侶も言ってみれば一つの人的資本であり金融資産ともいえます、苦笑)。
「美」が経済合理的に考えても、幸福感に重要であることは間違いありませんね。
この結論で終わるつもりはなかったのですが、長文で疲れましたのでおわります。
年内にもう一度更新できれば、と思いますが、ひょっとすると来年まで持ち越しになるかもしれません(笑)。