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3回にわたって、これから美容外科医になろうとする人は形成外科の研修と専門医が必要になる、ということを解説してきました。

誤解をしてはいけないのは、美容外科医になろうとする人にとって、形成外科は「必要条件」ではあるが「十分条件」ではない、ということです。

私が形成外科をメインにしていたころ、同僚の中には美容外科をやや軽んずる傾向のドクターを見受けることが多く、形成外科をやっていれば美容外科などすぐにできる、という雰囲気がありました。

逆に形成外科出身でない美容外科の先生の中には、形成外科医のそのような「慢心」を嫌っている方も見受けられました。

何度も言うようですが、美容外科と形成外科は一見近い科に見えますが、中身はまったくちがいます。

それが証拠に、うちのクリニックに修正目的で相談にこられる患者さんのなかで、重症なのは形成外科出身のドクターの術後が圧倒的に多いのです。

形成外科医のなかでも手術にかなり自信のあるドクターは、なんでも手術で治せる、と考えがちです。

もっと言うと手術をするのが目的のようなドクターもいます・・(根っから手術好きなのでしょうね)。

私の考えは、美容外科診療において手術はあくまで手段の一つで手術以外の方法にも熟知していなければ、患者さんの美容満足度をあげることについて、「澄んだ眼(まなこ)」をもって考えることはできない、ということです。

最初から手術ありきでカウンセリングをしないように心掛けているのはこういった理由があるからで、場合によっては患者さんの希望する手術をあえて断ることがあるというのもそういう理由です。

美容外科医は手術がうまくなければいけないのはあたりまえですが、それを目的にしてはいけない、というむずかしさを重々わかったうえで診療にあたるというのが真の美容外科医の姿ではないかと考えています。

手術の絶大な効果を知れば知るほど、手術が患者さんに及ぼす影響に畏怖の念を抱くことを忘れてはならないと肝に銘じて診療にあたっています。

標榜というのは、クリニックを開業するときに診療科を掲げることを言います。

現行の医師法によると、驚くことに今の日本では医師免許さえがあればどんな科でも看板に掲げることができます(麻酔科だけは標榜医の免許がいります)。

たとえば初期研修を終えれば(通常卒後3年目)、明日からでも「美容外科」の看板を掲げて開業できます。

また昨日まで内科医として働いていても、泌尿器科で働いていても、今日から美容外科の看板をだして働くことができます。

この自由標榜医制度は何十年も前の医療水準で考えられた古い制度です。

しかしこのような制度が今後続くとは思えません。

そう考えるのにはいくつかの理由があります。

まず医療の立場から見ていくと、医師は卒業するまでに一通り全科を勉強しますが、以前ならともかく現代の高度に細分化・専門化した医療においてはそれだけの勉強ではとても足りません。

卒業してから10年ぐらい研修しないと専門医として一人前にならないのが現在の医療水準です(ここでいう専門医とは並みの水準をクリアしている医師という意味)。

当然一人の医師が取得するのは一つの専門医が原則です。

患者さんの立場からいえば、標榜科をみてそのドクターの専門分野を知るわけですから、ある意味最低限の情報提供にあたる「標榜科」がその役割を果たさないとなれば、その意味がなくなります。

これは社会的にみても医療制度の混乱の原因となります。

一方2017年から専門医制度が大幅に変わります。

美容外科の専門医は、基礎的な診療科の一つである形成外科専門医を持っていることが前提になる2階建て制度に則ります(たとえば呼吸器内科専門医は内科専門医を持っていることが前提になるのと同様の制度)。

しばらく制度上の混乱や改正が続くとは思いますが、そこが一旦落ち着けばその次には標榜医制度の見直し問題が浮上してくるのが当然の流れでしょう。

並みの医療水準をクリアしている専門医(これが厚労省の考えている専門医です)が、その分野の医療科を標榜できるという、患者さんから見れば当たり前の標榜医制度にならなければ、将来の医療の発展はないと思います。

そういった意味でも、これから美容外科医を目指す医師は、形成外科専門医を取得したのちに美容外科専門医を取ることを目指すべきです。

前回、美容外科医でも形成外科の経験や形成外科の専門医を持っていないドクターがたくさんいることを書きました。

今から25年ぐらい前までは、形成外科という科がほとんど認知されていない時代で、私が医学部を卒業したのが今から30年前、当時母校には形成外科はありませんでした。

さらに当時日本で行われていた美容外科手術のレベルでは、形成外科の研修を必要とするほどのものはありませんでした。

しかし時代が下り、医療の進歩とともに、美容外科でも新しく複雑な手術をするようになると、今までとはちがう基礎的な研究・臨床研修が必要になりました。

特に長期的に良好で安定した結果を得るためには、相当な基礎的研究・研修を積むことが必要になります。

具体的に一例を上げると、医療用人工物をもちいた美容の手術をする場合、材料そのものの性質や体内での変化変質など基礎的な研究も必要であり、材料そのものを扱ううえで臨床的なデータの積み重ねが絶対に必要になります。

戦後間もなく行われた怪しげな注入物による美容整形で、患者さんに不幸な結果をもたらしてしまった事実を考えると、そのころの幼稚な美容外科レベルでは当然の結果だったと理解できます。

はっきり申し上げて埋没法による二重や包茎手術をメインとする程度の美容外科なら、形成外科など外科系研修は必要ありません(昨日までメスを持ったことのないドクターでもなんとかできます)。

しかし、この情報化時代、患者さんのほうが高度な手術方法を指定してきて、美容外科で行われる手術はどんどん複雑化してきています。

その要望に応えるためにもこれから美容外科医を目指すドクターは、少なくとも外科系研修できれば形成外科研修を5年以上することが必要と考えます。

さらにこれからの社会的な流れの変化からいえば、形成外科の研修を修めて形成外科専門医をとってから美容外科を目指されるといいと思います。

そのあたりの社会的な事情の変化については次回詳しくお話ししたいと思います。

形成外科の専門医を持っていない美容外科の先生はたくさんいます。
むしろ、形成外科の専門医をもっていない美容外科の先生のほうが持っている先生よりも多いかも知れません。

そのあたりの事情に少し詳しい患者さんの中には、形成外科の経験のない美容外科医は手術が下手だと思っている方がいるようです。

しかし実際、美容外科の手術が上手とか下手とかは、形成外科手術の経験の有無とはあまり関係がないようです。

形成外科医でも手術がそれほどうまくない人もいるし、形成外科以外の外科系の経験があって美容の手術を器用にマスターしている先生もいます(さすがに美容外科以外でメスを握ったことのない内科系ドクターが美容外科の手術をするのはどうかと思いますが・・・)。

それではなぜ美容外科医に形成外科の研修や専門医がいると考えられているのか・・・。

外科系には、形成外科以外に、腹部外科、胸部外科、心臓血管外科、脳外科、整形外科、泌尿器科、眼科、耳鼻科などがあります。

そのなかで形成外科が選ばれる理由は、それが美容外科の手術をするうえで結果的に一番効率のいい研修になるからです。

形成外科や美容外科は扱う分野が「体表」を主な対象としている点や、見た目を改善することを目的としている点などで共通することが多いと考えられているからです(形成外科以外の外科系の分野は、機能的な改善を目的としています)。

顔面の傷を縫合するという点で考えてみると、いきなり美容外科で練習するのは傷のない顔面に一旦傷をつけるわけですから患者さんに迷惑をかける可能性がありますが、形成外科には外傷によって既にできてしまった傷があるわけですから、患者さんに損失をあたえてしまうことなく縫合のスキルをアップすることができます。

それ以外にも、形成外科の研修が美容外科医に役に立つ点は、いくつかあります。

一つには形成外科では創傷治癒過程を常に考えながら傷を扱うので、その経験が傷を目立たせてはいけない美容外科の手術をするうえで役に立つといえます。

また形成外科では傷を速やかに合併症なく治癒させることを学べる点でも、それが美容外科の手術を行う上で役立ちます。

もう一つは、形成外科では医療用異物(シリコンなど)の取り扱い方を学ぶことができる、という点で、ほかの科とは決定的に違う研修ができる科といえます。

美容外科は形成外科の一分野ではありませんが、考え方に共通したものがある点でほかの科の研修よりも形成外科を研修したほうが無駄なく美容外科の基礎を身に着けることができると考えられるわけです。

私が形成外科医から専任美容外科医になって12年経過しました(美容外科をかじりだしてからだと27年ほどです)。

年齢も50半ば、美容外科医としてはピークを越えようとしています。

そろそろ後進に道を譲ることも考え始めなければいけない年齢になってきたかもしれません。

聞いた話ではこのブログの読者には医師の方も多く、これから美容外科医になろうとしている人もいらっしゃると聞いていますので、そういった方を意識して書いてみました。

なかでもこれから自分で美容外科のクリニックを開業しようと考えているドクターに参考になれば幸いです。

何回かに分けて書くことになるかもしれません。

項目を先に上げておきます。

1 これから美容外科医になろうとしているならば、必ず形成外科の専門医をとること。

2 チェーン展開の美容外科クリニックに勤務することは「武者修行」と心得るべし。今まで形成外科医として培ってきた実力がどれくらい美容外科で通用するか、を知るいい機会になります。

3 最終的に自分で開業する前に、クリニック経営の勉強を一通りすること。開業してすぐ倒産では患者さんに迷惑をかけることになります。

4 「美容外科」とはなにか、日々の診療の中で常にこのことを考えること。美容外科を誤解している人があまりに多い(現役の美容外科医ですら)。

5 美容外科で開業する以上は、保険診療に頼らないで100%自由診療で患者さんと向かい合ってみることをお勧めします。医療の本質とは何かをみることができるし、美容外科医としての自分の価値を思い知ることができます。

いずれにしても、形成外科をある程度修めてから美容外科医になることを考えるのが本筋でありますが、形成外科と美容外科は似て非なるもの、ましてや美容外科が形成外科の一部と考えるなど形成外科医のおごり以外の何物でもない、といいきれます。

以上のことを、今後時間のある時に少しずつ書いていくつもりでいます。

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