レーザートーニングについて、もうちょっと書きます。
レーザートーニングで用いられる器械はmedlite C6(QスイッチNdYAGレーザー)といわれるもので、このレーザーには1台で2波長(532nmと1064nm)に切り替えられる装置がついています。
レーザートーニングでは1064nmのほうを用います。
1064nm(長波長)を用いることでレーザーのエネルギーが深部に到達します。
そうすると通常表皮の深いところに存在しているメラノサイト(メラニンをつくる細胞)にもレーザーのエネルギーが届くようになります。
これによってメラノサイトを減らすことができれば、メラニン色素ができにくくなるわけですから、日焼けをしにくくなる、ということを以前の記事にも書きました。記事はこちら。
一方浅いところに存在することの多い老人性色素斑(いわゆるしみ)には、532nmの短波長を使用します。
これはメラニン色素を直接破壊します。しかしそれによって起きる炎症後の色素沈着(レーザー後色素沈着)が問題になります。よく「戻りしみ」といわれます(しみではなく簡単にいえば「レーザー焼け」です)が、しみの治療でもっとも難しい問題がこれです。
しかしよく考えてみるとこのレーザー後の色素沈着もメラノサイトが作っています。
だとすると・・・、老人性色素斑の治療には、前もってレーザートーニングをしておいて(メラノサイトを減らしておいて)そのあとに532nmで色素斑の治療をすれば・・・、レーザー後の色素沈着が起こりにくいのではないか・・、と考えてもいいですよね。
たしかに実際この二つの波長を併用しながら色素斑の治療をするといわゆる「戻りしみ」が起きにくい印象があります。
こじつけかもしれませんが・・、理論的にはあっています。
(もし同業者の方で、このような治療をされている、あるいは文献にすでに発表されているのをご存じの方がおられましたらご一報ください。)
いずれにしても器械そのものはそれほど新しいものではないYAGレーザーですが、使いようによってはあたらしい治療の可能性を秘めていることにとても興味を感じます。
古いものの「再定義」(ちょっとおおげさかもしれませんが)ほど、わくわくさせられるものはありません。たのしいですね。
最近、レーザートーニングの患者さんが増えてきました。
レーザートーニングを1クール(2週間おきで合計4回)受けられた患者さんの感想は、どなたも「白くなった」とおっしゃいます(決して営業心からの誇張ではなく・・・です)。
使用しているのはHOYAのmedlite C6というレーザーですが、とても優秀な器械だと思っています。
開業当初から導入していましたが、最初はしみをとることぐらいしか使い道がなくて物足りなかったのですが、この「レーザートーニング」ができるようになって、この器械の持ついいところがフルに発揮されています。
壊れにくく安定していて、メインテナンス費用がほとんどかかりません。
非常勤で勤めている医大の形成外科には「ルビーレーザー」がありますが、それと比較すると特にこういった印象をもちます。
レーザーというのはハイテク(この言葉こそもう古い?)の塊ですから、非常にデリケートな器械です。
そのなかで炭酸ガスレーザーとC6などのYAGレーザーは非常にタフで、安定した出力が得られます。
患者さんに満足していただける結果がお約束できることがレーザーの第一条件であることはもちろんです。
そのうえで、メインテナンスが容易であること、タフであること、出力が安定していることの3条件がそろうことが私にとってのいいレーザーです。
これらの条件を満たすものとして採用したレーザーが「medlite C6」と通常の「炭酸ガスレーザー」、「炭酸ガスフラクショナルレーザー(eco2)」です。
小切開による重瞼術について・・です。
傷が短くて(全切開よりも)整容的に優れている、ということがこの手術の売りのようですが、はたしてそうでしょうか?
実は、当クリニックでお引き受けする他院の重瞼術の修正のうちの2割ほどは、小切開の修正もしくは小切開の既往のある患者さんの修正です。
当院においては埋没法のあとの全切開による修正が一番多いのですが、小切開の修正の場合、瞼に加えられたダメージは埋没法の術後にくらべて比較ににならないほど大きいものです。
以前このブログで書きました「ミューラー筋」まで切断されていた患者さんも小切開の術後でした。
短い創から瞼全体の解剖を把握して適切な手術をすることは意外に難しく、とくに小切開で幅広の二重をご希望の場合、ダメージばかりが大きくしかもラインが取れやすいというように、患者さんにとっては何もいいことがないと考えています。
昨日も書きましたが、瞼の手術のキーポイントである挙筋腱膜を確実に同定するには、ある程度の術野(皮膚切開によって得られる視野)が必要です。
患者さんにとっては、傷が1mmでも短いほうがいい、とお考えになる気持ちもわからないではないのですが、一番大事なことは手術が安全におこなわれ、そして何よりも確実な結果が得られる、ということです。
もし瞼にすこしでも傷をつけることに抵抗があるならば、まだ埋没法で対処するほうがよかったのではないか、と思えるケースも散見されます。
美容外科医に対して申し上げたいのは、よほど瞼の手術に自信があるならば別ですが、中途半端な経験で小切開手術をしているといつかはトラブルを作ってしまうことになりかねないし、それを修正することになれば、患者さんの負担ははかり知れません。
おなかの手術(胃摘出術や胆のう摘出術など)において、浅い経験で腹腔鏡による手術を行うことがどれほど危険なことかは既知の事実であり、今回のことも容易に想像がつくことです。
私自身、小切開で真の腱膜を100%同定できそれに対して確実に適切な処置ができ、その結果100%安定した自然な二重のラインを作ることができる、という自信がいまだにありません。
手術をしていると新しい発見というものもありますが、日頃たぶんこうなんじゃないだろうかと思っていることの確信を得ることもあります。
最近の確信は、切開式の重瞼術の手術中に得られることができました。
それは、挙筋腱膜の構造です。
以前の記事にも書きましたが、腱膜は何層にも分かれていて、その中でも眼窩脂肪に最も近いものが一番パワフルであるということが言われています。
手術中たまたま眼窩脂肪に近い膜が腱膜に取り込まれない事態がおき、そのまま瞼板に固定したところ、今一つ下垂状態が改善されません。
そこで眼窩脂肪をよく観察したところ、膜一枚が剥離されていないことに気づきこれを腱膜に取り込んでみたところ急に下垂状態が改善を見たのです。
この膜はとても薄く、ちょっとしたことで裂けてしまいかねないぐらいの薄さです。
しかしこの膜一枚に瞼の下垂を確実に予防できる力があることを、今回の手術で確信できました。
頭では分かっていても実際にこの現象を目の当たりにすると、切開式重瞼術はよほど慎重に手術をしないとこの膜を見逃してしまい、術後の下垂状態を生じる可能性があることがわかります。
さらに修正手術のとき、眼窩脂肪を確認できるまでは本当の腱膜を同定することは不可能である、ということも経験からわかっていたことですが、今回のことで、それについての確信も得ることができました。
久しぶりに趣味のお話でも・・。
以前鉄道模型のお話をしました。
自分でも作りますが、完成品を買うこともあります。
そういった完成品でちょっと手の込んだ精密な模型になると、今はそのほとんどが韓国製です。
戦後の一時期には日本製が優れているという時代があったそうですが、いまでは数でも品質でも韓国製のほうがはるか上をいきます。
なぜなら彼らは世界中でもっとも厳しい注文をつけてくるアメリカやヨーロッパのインポーターのハイレベルな基準を満たす鉄道模型を作ることにならされてきたからです(ちなみに韓国にとって日本のインポーターの注文をきくことなどチョロいものだそうです、わかりやすいく言えばなめられているのです)。
国内のユーザーにあわせて国内で生産している日本のメーカーは、韓国のメーカーにはとても太刀打ちできません。
その原因は、鉄道模型は作ってみるとわかるのですが、本当に手間がかかるもので、今の日本では、そこまで手間のかかる仕事をする凄腕の職人がいなくなってしまったからだそうです(厳密に言えば安い給料では働かなくなったということです)。
それにしても、技術の衰退はあっという間です。
厳しい注文を付けていただく顧客があってこそ技術の維持・向上が成り立つというものです。
美容外科も同じです。
美容外科にはいろいろな他科から転科されて活躍されているドクターがいます。
外科、整形外科、麻酔科、皮膚科などはもちろん、昨日まで内科を専攻されていたドクターまで美容外科医として活躍されています。
逆に美容外科といえば形成外科出身が本筋のように思われていますが、必ずしも形成外科出身の先生だから美容外科医として優秀とは限らないような気がします。
なぜなら、形成外科出身のドクターに手術してもらった患者さんの修正も結構あるからです。
むしろそういったドクターの手術後のほうが、結構ディープなところまで手術の手が伸びていて、とても修正が難しかったりします。
そういう私も形成外科出身で偉そうなことをいえないのですが、日頃から心掛けているのは美容外科の手術と形成外科の手術のちがいを忘れないようにしていることです。
美容外科の手術そのものは手技的にはそれほど難しいものはありません、なかには1日で習得できる手術もあります。
しかし、だからといって美容外科そのものが簡単ということにはなりません。
私が考える美容外科医療とは、突き詰めていくとそれぞれの患者さんの「心」が、美容外科手術を受けることで・・ぐっとくる(ちょっと言葉で表現がむずかしいです・・)、そういったことを手術で実現する、そう思っています。
そのためには美容外科医としてできるだけたくさんの種類の「結果を出せる手術」ができる必要はありますがそれだけでは足りません。
それ以上に必要な患者さんの「心」の問題とはなにか、それをいつも追求して忘れない姿勢こそ優秀な美容外科医としての資質だと考えます。
その答えはおそらく一生かけても結論が出ないほど美容外科は奥が深く、興味が尽きない、面白い科なのだと思っています。
ここのところ鼻に関しましては、プライマリー手術が続いて、ほっとしていました(プライマリー手術とは、修正手術ではなく当クリニックで初めて行われる手術)。
とてもしなやかな鼻翼軟骨に、瘢痕がまったくない皮下組織のために、術前に患者さんとお約束した形をほぼ忠実に作ることができ、術後の経過も今のところ順調のようです。
ところが先日の手術は、一転して他院の鼻尖縮小術後の修正ということで、術前からかなりプレッシャーを感じながら、術中は案の定、瘢痕との格闘となりました。
まぶたの修正手術も同様ですが、とにかく瘢痕をいかにコントロールするか、修正手術はこれに尽きます。
瘢痕によって伸びなくなっている皮膚やかたくなった皮下組織、軟骨をできるだけプライマリー手術の時のような状態にもっていけるかで、手術の結果が左右されます。
できるだけ瘢痕を取り除くことを前提に手術を始めるのですが、そうするとどうしても正常組織までダメージが加わります。
それでなくとも前回の手術でそれなりのダメージが加わっているのですから、術者にとって修正手術はまさに「針のむしろ」状態です。
手術後もプライマリー手術であれば、腫れも少なく、術後出血も少ないので経過が順調な患者さんがほとんどです。
ところが修正手術の術後は、術後出血も多く腫れも長く続き、さらなる瘢痕が生じ、術後に変形をきたしやすい、など悪条件が重なります。
それは瘢痕硬縮といって、術後に生じた瘢痕が縮まって起こることが原因です。
その硬縮に負けないような強固な支持組織が必要で、プライマリー手術よりも通常大掛かりな手術が必要になります。
患者さんには、何度も申し上げますが、手術は一番最初の手術が肝心です。
くれぐれも術前のカウンセリングには十分な時間と費用を惜しまないようにしてください。
その際、「簡単にできますから・・・」という美容外科医の言葉には油断してはいけません。
私自身、美容外科の手術で「簡単な手術」って思える手術はひとつもありません。
ここのところ眼瞼下垂術後の修正の患者さんが続きました。
いずれも他院で眼瞼下垂の手術をうけ、その後修正を受けた結果が思わしくなくて、当院での修正手術希望となった患者さんです。
修正術の修正ともなると、こちらもそれなりの準備をして手術を引き受けるかどうか決断することになります。
そのために前もって、手に入る情報を集めます。
最初の手術の術前の写真や、修正手術の直前の写真、それぞれの術後経過、患者さんは術者にどのように説明をうけ、患者さんはそれに対してどのように感じたか、最初の手術のあと修正したくなった理由などとにかくお聞きできることはなんでも聞いておきます。
そうして、最初の手術からうちのクリニックの初診に至るまでの流れをできるだけつかむようにします。
それから今の瞼の状態をつぶさに観察し、いままでどのような手術がおこなわれてきたか、それによって得られる結果と今の状態がむすびつくかどうか、などストーリーを組み立てます。
そこの段階ではじめて、当クリニックでの修正手術の内容、期待できる結果、リスク、術後経過などをまとめて患者さんにお話しします。そのためにカウンセリングは少なくとも2回は必要になることが多いようです。
これだけの準備をしても、実際に手術で傷を開けてみないとなにが行われてきたかはわからないケースが多く、患者さんにも術者にもたいへんストレスの多い手術となります。
なかには、前回の手術で挙筋腱膜にたどりついた形跡のない症例も見受けられます(同業者のかたで、そんなバカな、と思われるのであればあなたは手術の経験が足りない初心者か、逆にスーパードクターか、どちらかです)。
そこで感じるのは、術者に修正する自信がなければ眼瞼下垂の「修正手術」はできるだけ避けるべきで、それでも患者さんが修正を希望される場合は、セカンドオピニオンをすすめてもいいのではないかと思います。
中には、2回目の修正手術をやめておけばこんなことにならなかっただろうに・・・と思う症例もけっして少なくないからです。
最近の傾向として、他院でうけられたフェイスリフトの修正希望の患者さんが増えてきたように思います。
切開二重や鼻の修正手術は従来からあり、相変わらず多いのですが・・・それに比べて、以前も書きましたが、フェイスリフトの修正はそれほど多いものではありません。
もともと手術自体が高額であることと、結果がアンダーであるという以外にこれといって困ることがないためか修正手術を決意するまでに至らない、、ということでしょうか。
それでも修正希望される患者さんの目的は、とにかく結果を出してくれ、気になっているたるみをとってくれ、ということのようです。
このようなことを書きますと「え~そんな当たり前のことがかなえられないの~」と思われるかもしれませんが、それが現実のようです。
そういった患者さんの修正手術を実際にしてみると共通した所見があることに気づきます。
それは、まずSMASに全く手がつけられていないことと、皮下の剥離範囲が圧倒的に少ないことです。おまけに傷がめだつ、ということで、患者さんにとっては踏んだり蹴ったりの状態です。
真偽のほどはわかりませんが、患者さんはSMAS法だと説明をうけたにも関わらず、です。
SMAS法がすべてとは思いません。しかし、術前にそのように説明されたのであれば(若しくはHPで「うちはSMAS法をしています」とうたっているのであれば)、少なくともSMASを弁上に作成して後上方に引き上げることはされていなければいけません。
手術というのは、正直なものでいくら皮膚の下で行われたものでもちゃんと傷跡になって残りますから、再手術のときに前回の手術でどのような手術が行われてきたかはすべてわかってしまいます。
そういった患者さんもお気の毒だとは思いますが、なによりも「フェイスリフトってこの程度のもの?これならやらないほうがましじゃん・・」と患者さんに思われてしまうことがとてもつらいです。