10月もあとわずかになりました。
そろそろ年末に手術を考えておられる患者さんの相談が増えてきているようです。
先日、当クリニックに小顔希望の患者さんが来院されました。
その患者さんの要望は、「顔の脂肪吸引」でした。
患者さんの本当の希望はきっと顔が小さく見えるようなキュっとした顔にしてほしい、ということだと思うのですが、それがいつの間にか希望が「顔の脂肪吸引」に替わってしまっているようです。
鼻の手術や小顔の手術の場合に多いのですが、「目的と方法の混同」がここにも見られます。
美容外科について詳しい患者さんほどこういった傾向があり、ネットによる情報がそれに拍車をかけているようです。
こういった患者さんの多くは方法が目的化されてしまい、その結果、いろいろなところで手術をうけることになって結果に満足せず次々に手術をしていく、という傾向がみられるようです。
この負のスパイラルから抜け出す方法は、患者さんが自分自身の考え方を変える以外にありません。
手術をする前に、自分自身のなりたい姿がなんであるか、どうなれば満足できるのか、その手術でそれが本当にかなえられるのか、よーく考えることです。
その時に、患者さんのご希望がその手術でかなえられるかどうか的確に判断してくれる美容外科医が真の美容外科医だと思います。
フェイスリフトで重要なのは、頬上部の特殊な皮下脂肪(CFP)と頬下部の皮下脂肪(JFP)の下垂・変形を修正することです。
CFPが下垂し、ロール状になると法令線が目立つようになるということを前々回の記事で書きました。
同様に、JFPが下垂変形するとマリオネットラインが目立つようになります。
変形の原因は、脂肪塊の浅いところの下垂が深いところよりも大きいために脂肪塊に歪が生じることによると考えられます。
これらを確実に修正する方法はなにかを考えてみましょう。
意外に思われるかもしれませんが、SMASを引っ張るよりも皮膚を引っ張ったほうが効果的です。
なぜかといえば、脂肪の浅いところを引き上げることが歪の解消になることと、この二つの皮下脂肪は皮膚と強く密着しているけれど逆にSMASとは緩やかについているだけなのでSMASをひっぱてもなかなか挙がってこないからです(そもそもCFP、JFPあたりにはSMASあるいはそれに準じた組織は存在しないことがわかっています)。
ところがこの皮膚で引っ張り上げる方法には大きな問題点があります。
それは、皮膚で中途半端に引っ張っても皮膚はすぐに伸びるので効果があっという間になくなる、ということ。
さらに、もうこれ以上伸びません、というところまで皮膚を思いっきり引っ張れば効果は長持ちしますが、そこまで行くと顔の表情は張り付いたような不自然な感じになってしまいます。
この二つのうちのどちらかが、皮膚で引っ張るフェイスリフトの術後に行き着くところです。
思い当たる患者さんや美容外科の先生は多いのではないでしょうか。
そこで、残された道はこれらの皮下脂肪を直接引き上げる方法を考えないといけない、ということになります。
症例写真を更新しました。症例写真はこちら。
鼻の修正手術の患者さんで、前医において「鼻尖縮小術」と「鼻尖軟骨移植」を受けられたそうです。
前医の先生の名誉のためにおことわりしておきますが、決して手術そのものが失敗だったというわけではありません。
患者さんのご希望する鼻にならなかった原因は、手術手技の問題ではなく患者さんの目指している「鼻」のイメージをドクターに伝えきれなかったことによるものと思われます。
修正手術の原因で最も多いパターンです。
一般に、ドクターは患者さんのおっしゃることをよくお聞きして手術の方法を決めることが重要だということがいわれますが、それだけではちょっと足らないのではないかというのが私の意見です。
この患者さんの場合も、前医に「鼻を細くして鼻先を尖らせてほしい」ということを確実に伝えています。
この言葉をそのまま「美容外科手術用語翻訳機」にかけると、「鼻尖縮小術」と「鼻尖軟骨移植術」という答えが返ってきたのだろうとおもいます。
実はここに落とし穴があって、「鼻尖縮小術」=「鼻尖を細くする手術」ではないということを理解しなければいけません(これは美容外科医の先生において特に、です)。
つまり美容外科においては「鼻尖縮小術」=「鼻翼軟骨引き寄せ縫合術、鼻尖軟部組織切除術」であって100%「鼻尖を細くできる手術」ではないからです。
わかりやすくいえば鼻尖を細くする(目的)にはいろいろな手術(方法)があって「鼻尖縮小術」はその一部にすぎないということです。
この患者さんの真の要望は、「見た目に鼻先が細くとがった感じになって、鼻先の位置は下がるでもなく上がるわけでもなく、鼻筋が鼻先まで途切れることなく通っていて、しかもどこから見ても鼻先に丸い感じがない、違和感のない鼻になりたい」ということだろうと理解しました。
そこまで理解するのに、術前に3回のカウンセリングで計3時間以上の打ち合わせを必要とし、その間に、話をお聞きするのはもちろんですが、こちらから提案をしたり、理想の芸能人の写真をみてみたり、コンピューターでシミュレーションをしてみたり、絵を描いて見てみたり、とにかくいろいろな方法で共通のイメージを作り上げるようにしました。
美容外科の手術名というのは、時に術後のイメージを作る上で間違った方向に我々を陥れてしまう罠になります。
手術名は方法であり、決して目的にはなりえないのです。カウンセリングでまず第一に重要なのは、目的をはっきりすることであることはいうまでもありません。
前回の続きです。
ちょっと専門的になりますので、一般の患者さんには退屈かもしれません。
フェイスリフトに興味のある人なら必読だと思います。
フェイスリフトは過去にいろいろな方法が提唱されてきました。
SMAS法、Extended SMAS法、リガメント法などどんどん複雑な方法が行われるようになってきました。
より効果が高くなり、効果の持続も長くなってきたのは確かです。
しかしこれらの方法には、東洋人の顔の特徴にそぐわない面があることに最近気づくようになってきました。
一つは、西洋人と東洋人では顔の形がことなり、耳の前(顔の側面)と顔の前面が面として異なっているものである、ということ。
さらに東洋人においては、若返りは顔の前面にポイントが集中していること、の2点です。
ほうれい線にしても、マリオネットラインにしても、顔の一番前の部分のたるみが原因であり、耳の前の皮膚(顔の側面)を一生懸命引いても一番遠いところが引き上げのターゲットになってしまっているため効果が出にくいのです(西洋人に比べて)。
もうひとつ重要なことは、3次元的にみてどの部分が下がっているか、深い層なのか浅い層なのか中間の層なのか、という問題です。
顔のたるみは、実はこれらの層の間で下がっているところとそうでないところの差があり、そのアンバランスがほうれい線やマリオネットラインを目立たせている、ということが原因として大きく関係している。
それが最近の私の知見です。
美容医療においては術前術後の写真を比較して、美容治療が適切な効果を生み出しているかどうかを判断しています。
そのためには最低限、術前術後の写真の条件をそろえることが重要であることは今までに何度も申し上げてきました。
去年の学会で、ある先生の発表についてそういったことを指摘したことがあったのですが、その後その先生から「先生のおっしゃる通りだと思うのですが、実際になにかいい方法あります?」と相談されました。
うちのクリニックでは、撮影のためのスタジオを作っています、とお答えしました。
スタジオといってもクリニックのなかには限られたスペースしかありませんので専用スペースはとれなくて、診察室の隣の廊下部分をスタジオ兼用にして使っています。
巻き上げ式のバックスクリーンと外部ストロボ(以前にも書きました、天井からつりさげています)にすることで、廊下の機能を損なわないようにしつつ、それでも結構立派なスタジオとして効果を発揮しています。
うちのクリニックは30坪しかありませんので、部屋のレイアウトにはずいぶん時間をかけて考え、できるだけデッドスペースを作らないように工夫しました。
診療時間中に遊んでいる部屋やスペースをできるだけ最小限にするため、兼用できるところはできるだけ兼用にしたのです。
その結果、一番無駄とされたスペースは院長室で、実際院長室は患者さんの回復室と美肌器械の置き場兼用になっています。
このブログも、患者さんの回復ベッドとサーマクールなどの器械に囲まれた部屋の片隅でこそこそと書いています。
先日親戚の法事がありました。
お経の前に説法があり、住職のかたからお話しを頂戴いたしました。
それは「達磨(だるま)大師」についてでした。
達磨大師は禅宗の開祖ですが、達磨大師はどうもインドの偉い人だったようです。
どうりで髭が濃く、目がぎょろりとしているわけです。
インドからはるばる中国まできて禅宗をひろめたとのことで、中国の「嵩山少林寺(武術で有名)」で禅を行い(面壁九年)そこから禅宗がひろまったとされ、曹洞宗の拠点となっているようです。
「だるまさん」、「少林寺」、「曹洞宗」はそれぞれ身近なものでしたが、それらが全部つながっていたとはそのお話しを聴くまえまで知りませんでした。
さらに達磨大師が亡くなられた日10月5日を「達磨忌」ということも初めて知りました。
10月5日は、スティーブジョブス氏が亡くなった日でもあり、私の母の命日でもあります。
日本美容外科学会の1週間後、東京で日本形成外科基礎学会がありました。
こちらは発表する予定もなかったので、気楽に参加し一つでも新しい知見が得られれば儲けもの、ぐらいのつもりでした。
私にとって1日目の午前中のアンチエイジング関係のシンポがメインでしたので、朝早く起きて上京しました。
その中でレーザー関係の話を聴いていると、今のトレンドがフラクショナルレーザーとレーザートーニングの二つであることがわかり、うちのクリニックの方針に誤りがないことを再認識しました。
とくにレーザートーニングの発表で、照射後の皮膚基底層にあるメラノサイト(メラニン色素を産生する細胞)が減少していることを示していただけたのには、非常に興味をひかれました。
これは、レーザートーニング後皮膚が日焼けしにくくなることを示唆しているからです(実際にレーザートーニングを受けた患者さんでその後日焼けしにくくなりました、という感想を聞いたことがあります)。
今までの私たちの常識では、美肌治療は続けないと元にもどってしまい予防効果はない、というものでした。
そういった意味では「レーザートーニング」はこれからの美肌治療の可能性を広げてくれるものかもしれません。
その発表でもうひとつよかったのは、バーチャルスライドといって皮膚のスライド切片を実際に見ているような感じでプレゼンを見ることができたことです。
皮膚の標本を見せる場合に、従来ですと演者の都合のいいところだけ切り取ってそこだけみせることができてしまい、発表に信憑性がなくなります。
標本全体を強拡でも弱拡でも見せてもらうことができたので、たしかに全体としてメラノサイトが減少していることがわかり、上記のことが納得できたというわけです。
学会発表というのも、厳しい目で見ないと演者のトリックに引っ掛かって間違った情報を得てしまうことが我々でもあります(もちろん演者自身もそれ意図しているわけではないと思いますが・・)。
新しくて正しい情報を得ることは意外に難しいものであり、そんなに簡単に一度にたくさん得られるものではないのです。
パソコン黎明期のころ、その頃の多くの医者がそうであったように、「マッキントッシュ=マック」を買いました。
学会のスライドを作るのにパソコンは必需品だったのです。
マウスが使いやすかったのとアイコンがわかりやすかった、という印象が残っています。
何台か買い替え、使いこんでくると何か物足りなさと頻繁にフリーズするマックに見切りをつけて、「ウィンドウズ」に移りました。
おそらく大半の医者もそうであったはずであるということが、現在学会においてマックで発表する人が圧倒的に少ないことからもわかります。
私にとってOSとソフトが違うものということがはっきりしていたウインドウズのほうがわかりやすかった気がします。
Ipodも買いましたが、最初あれだけたくさんの曲が小さな箱におさまるというところにはちょっとびっくりしましたが、製品の作りの甘さや次々に動かなくなってしまうもろさには、「またか・・・」という思いがありました。
私にとってアップルの製品には中身がどうなっているのかがわからない(それはソフトにもハードにもいえる)というところに製品に熱狂的になれない原因があります。
次々に新しい製品が出てくるところもアップルの製品に愛着がわかない理由のひとつでしょう。
それでもスティーブジョブスは尊敬されるべき人間で、それはいままでの考え方をかえる・・「再定義」をするというところの発想力が普通の人間ではなかったからだと思います。
そこには古い考えを捨て去る、そこにこだわる考え、余分なものを捨て去る、という潔さが必要であったと思います。
こうして考えると、「死」は偉大な「発明」である、という彼の言葉からもわかるように、彼自身の死を含めた人生が彼の考え方そのものであったといえます。
学会のだいご味は、何といっても直接ドクターどうし顔を合わせて話ができ、普段なかなか伝わってこない、あるいは伝えられない情報が交換できることです。
今回の学会では、フェイスリフトでの自分の考えが間違っていなかったことが確認できたことがとても大きな収穫でした。
それが確認できたのも、発表の時間だけではなく、懇親会である先生とお話しをしていたときに、でした。
日頃このブログを読んでくださっている若い先生ともお話しができて、「先生のお考えがよくわかりました」と言われた時はちょっと複雑な思いがしました。
やはりブログだけでは真の情報は伝えられない、ということと、逆に、こうして学会で話ができるのもブログのおかげなのだということに、少々戸惑いを感じたからです。
まずは情報を発信することからすべてが始まるわけですから、少々理解されなくてもあるいは誤解されても書き続けることが大事なのかもしれないと思いました。
最近は学会発表を聞いていても、つくづく新しい治療に頭がついていかなくてなかなか理解できないのには困ります。
2つの日本美容外科学会が一緒になろうとしている機運にはとてもいいものを感じましたが、まずは一緒に学会でも開いて既成事実を積み重ねることが肝心かなと思いました。
それにしてもこの問題が、ドクターの一生を左右しかねない重大な問題であることがあらためてわかりました。
この問題を解決していく目的で作られた委員会の先生方が、そのことについて言及した時には正直目頭が熱くなりました。
私がこうして堂々と美容外科医として仕事ができるまでのあまりに長い道のりを振り返ると簡単には言葉にできない気持ちになります。
ただ言えることは、過去は過去として、今は美容外科の未来を考え、これから美容外科を志す先生に少しでもいい環境が作られればいいな~とそれだけを切に祈るばかりです。
我々はその「礎」になったと思えば、今までの苦労もなんのその、です。
先週の末、福岡での日本美容外科学会に参加しました。
いろいろとご報告したいことがあるのですが、個人的には発表も終了してやれやれです。
学会の内容についてはぼちぼち書いていきます。
来年の美容外科学会でも何か発表できたらいいな、と思っています。
実は昨日10月1日でめでたくうちのクリニックも丸3年を経過し、4年目に突入しました。
3年前の10月1日のこと、今でもはっきりと覚えています。
その頃の新鮮な気持ち、初心を忘れないように今後も頑張っていきたいと思っています。よろしくお願いします。
今週はまた形成外科基礎学会出席のため6日7日が休診になります。
患者さんにはご不便をおかけしますが、電話での対応は通常通りですのでよろしくお願いします。