物をみてその良し悪しを評価するとき、全体からくるインプレッションと各部分の細かいディテールの両方を見ます。
たとえば人の顔の良し悪しの場合、ぱっと見て顔全体のバランスで評価する場合と目や鼻といった部分がきれいあるいはそうでない、といった評価をします。
我々はこういった「全体」と「部分」で物事を評価することを日常的にありとあらゆる分野で行っています。
衣食住から始まって芸術芸能など人間の手によるものなどすべてといってもいいすぎではありません。
そしてその人の見方や評価は見る力のレベルによって、少しずつ変化していきます。
見ることを何度となく経験し、必要な情報を取り入れることで目の付けどころ、観点が細かくなり他の人では気づかないことまでわかるようになります。
ところがそれが行き過ぎると全体が見えなくなるということがしばしばおきてきます。
そこで悩み迷いそれまでわかっていたと思っていたことが急にわからなくなる、いわゆる壁にぶつかるわけです。
そこで諦めずに考え続けていくとそれまでとはまた違った世界に入っていける瞬間があります。とてもシンプルな、どうしていままでこんな簡単なことに気づかなかったのだろう、と思えるような世界です。
その時は「部分」の細かいところも十分わかったうえで、「全体」をも見ることができるようになった瞬間、といえます。
仕事・日常・趣味などで部分から全体、全体から部分へと見る観点を常に変えながら見方を深めていける、そのプロセスがとても楽しいと感じています。
美肌器械のなかで「エコツー」は特殊です。
エコツーは他の美肌器械と違っていわゆる「ダウンタイム」があり、短い人で2日間、長い人で5日間ぐらいあります。
エコツーの効果については、うちのクリニックでは施術前の説明であまり過大な期待をしないように説明をしてきました。(これはエコツーに限らずですが・・・・)
もちろん最初から回数を決めることはしないで、患者さん自身が効果があったと感じればその時点で2回目を考えてくださいとお話ししています。
そこで去年1年間でエコツーをうけた患者さんの動向を調べてみたところ、エコツーを受けた患者さんの65%が2回以上受け、さらに27%の患者さんが3回以上受けていることがわかりました。
2回以上受けた患者さんは、おそらく1回の照射で何らかの効果を感じたのではないかと思われます。
エコツーの効果については、理論的に実証されている(フラクショナル効果)わけですが、実際の医療で効果があったかどうかはなかなか判断が難しいと考えています。
照射前後の患者さんの肌を写真にとって拡大し比較すると、なるほど肌の凹凸が和らいでいることが分かるのですが、実際に患者さんの肌を見ただけでこの変化に気づくことはまれです。
ところがさきほどのデータからわかるように、患者さんの3分の2の方は初回照射後に自らの肌に何らかの変化が起きていることに気づくことができたと考えられます。
美容外科治療において患者さんの満足度がその優劣を決めるとするならば、エコツーはなかなかのものだといえるかもしれません。
先日開かれた「美容外科」学会のテーマは「眼瞼下垂」でした。
宇津木先生のご努力で大変有用な学会になっていました。眼科、形成外科、美容外科の先生がシンポジウム形式で討論するのを拝聴するという形式でハイレベルな学会になっていたと思います。
あえて言うならば、会場のセッティングに少々難があったのと時間があまりに少なすぎた、というのがとても悔やまれます。
さて内容についてですが、私の印象は一言でいえば「眼瞼下垂」というテーマの取り上げ方の難しさです。
この場でも過去幾度となく書いてきましたが、「眼瞼下垂」というのは病名、あるいは病態を表す言葉です。手術の方法をいうわけでもなくその改善方法を指すわけでもありません。
したがってこの「眼瞼下垂」をテーマにしてしまったら内容は膨大なものになってしまうことは明白です。つまり半日そこらの学会では到底結論など出ようはずがありません。
参加した学会員の多くがきっと、今回の学会でわかったようなわからなかったような、そんな印象をもたれたのではないかと思うのです。できれば日頃の美容診療になにか役にたつようなひいては患者さんのためになるような身近なテーマも話し合われるとよかったのですが・・。
美容外科の学会ですから最終的には、外見を改善するのに「眼瞼下垂の手術」を応用することでどのような問題点があるかということをもっと話し合うべきで、、。
要するに私たち美容外科医や患者さんは、目(目の見開き、もっと専門的にいえばMRD)を大きくすることでお顔全体が本当に可愛く若返って見えるようになるのか?その一点が知りたいのです。
美容目的であるいは若返り目的などで、気軽に眼科や形成外科・美容外科で「眼瞼下垂」の手術を受けられて「こんな外見になるとは思わなかった」と悩んでおられる患者さん、意外と多いのです。
その原因として考えられるのは、術後の眉毛の位置が正確に予測できないこと、重瞼ラインの位置、強弱のコントロールが難しいこと、上眼瞼のボリュームのコントロールの難しさ、などが挙げられます。
私の「眼瞼下垂」に対するテーマはここに挙げた3点で、今回の学会でもこのことについてなにか知見が得られれば、と思って拝聴していましたがなかなかはっきりした答えは聞けませんでした。
ワキガは医学的には「腋臭症」といいます。このワキガをなおす手術のひとつに「反転剪除法」というのがあります。
この手術法は古典的な方法で効果が確実に近いとされていますが、欠点は傷がわきを横切るようにできることと術後の圧迫が必要であることなどです。
この手術は保険が効きますので大きな病院の形成外科でおこなわれることが多いのですが、いろいろな事情で美容外科クリニックで受ける患者さんもおられます。
この反転剪除法には形成外科の手術手技の多くを必要とされます。
まず皮膚を一定の深さ(レイヤー=層)で剥離する(はがす)ことが必要です。これを脇全体に行うのですが短い傷からするのは結構難しいものです。
形成外科では皮膚を採取したり皮弁を作成する場合など皮膚を一定の深さで剥離することは日常的に必要とされるものです。
次に反転剪除法では皮膚の裏の「アポクリン腺」(=ワキガのにおいのもと)を取り除いていくのですが、過不足なく切除(剪除)することが必要です。なぜなら取り残すことは「再発」につながります。とりすぎると残った皮膚が薄くなりすぎて術後の傷の治りが非常に悪くなります。
形成外科で皮膚移植する場合、一定の厚さで皮膚を薄くする手技は必須です。
それが終わったあとには、入念な止血が必要です。直接止血の機械で行うことも重要ですが、術後の固定(タイオーバー)も重要です。このタイオーバー固定も強すぎず弱すぎずちょうど良い加減の力が必要です。
タイオーバー固定を含めてこれらは実は形成外科の手術の基本そのものです。つまり「反転剪除法」は形成外科の基本手技の宝庫なのです。
ある形成外科医の基本的な手術の腕は、反転剪除法をやらせればある程度知ることができるといえます。
新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
おかげさまで八事石坂クリニックも開業して3回目の新年を迎えることができました。
思うのですが、クリニックの特色が年々固まりつつあるように感じます。
よくいえば「らしくなってきた」、悪く言えば「独断的になってきた」ともいえそうです。
とにかく患者さんのご要望をよくお聞きし、それに正直にお答えする、というスタイルを今後も深めていきたいと思っています。
さて今年の新たな取り組みとして、ホームページのさらなる充実があります。
お気づきの方もおられると思いますが、会員患者様専用ページを新たにスタートさせる予定です。
一定の基準をクリアしていただいた患者様をクリニックの特別な患者様として登録させていただき、とてもお値打ちな各種のサービスをいち早くお届けできるようなページにしたいと考えています。
そのほかにも、一般のクリニックでは見たり知ったりすることが困難な真実にせまる情報を会員の患者様にお届けできるような仕組みを取り入れて行きたいとも考えています。
プライベートではやはり学会活動の充実が挙げられます。国内海外問わず積極的に学会へ参加するようにしたいと思っています。
カウンセリング、手術、アフターケアに関しましては、患者さんに納得していただけるように時間に余裕をもってひとりひとり丁寧に!、を今まで以上に心がけて行っていく所存です。
よろしくお願いします。