美容の手術で我々専門家と一般の患者さんの間で大きく異なる認識に「瘢痕形成」というものがあります。
たとえば二重の手術の「埋没法」で説明してみますと、一般的に考えられているのは、「埋没法」は糸を入れるだけの手術だから、逆に糸を抜けば元にもどせるというものです。
これは糸でできた二重の折ぐせは元にもどせるという意味で、手術前のまぶたの状態に完全にもどせるという意味ではありません。
この手術によってわずかでもまぶたに「瘢痕」ができてしまうからです。「瘢痕」というのは「傷跡」です。この正体はわかりやすく言えば「コラーゲン」線維です。
「瘢痕」は皮膚とくらべて硬くて、しなやかさがありません。分厚い新鮮な瘢痕は縮まろうとします。これが「瘢痕拘縮」です。
我々「形成外科をベースにした美容外科医」の、他と違うところはこの「瘢痕」への考え方が自然に身についていることです。この生成をいかに最小限に抑えながら創を治していくか、これこそが「形成外科」の考え方の根底をなしています。
同一部位の複数回の手術はこの「瘢痕」形成の蓄積がおきています。したがって美容の手術の修正は非常に難しいことが多いのです。
また、美容の手術の成否はその多くが皮膚の状態に大きく依存しています。手術にあたっては皮膚の状態を常に外科的な目でチェックしながら手術をする必要があります。このことは長くなるので別の機会に説明します。
我々は美容の手術をするにあたって上の二つをいつも考慮にいれながら、その患者さんに最もあった手術方法を選択しています。
過去の美容手術の修正を考えておられる患者さんは、ここのところを理解していただいてカウンセリングにのぞんでいただけると話の内容がかなりわかりやすくなるのではないかと思います。
普段楽しいと時間がたつのも忘れます。そういう時は本当に時間がたつのが早く感じられるものです。
手術の時も「楽しい」というよりは、「集中」しているので非常に時間が早く立つように感じられます。朝10時半ごろから始めて、はっと気がつくと3時半とか4時、というときもあります。
逆に時間がたつのが遅く感じられるときがあります。
私の場合、有酸素運動のためにジムで自転車をこいでいるときが一番長く感じられる時です。
あと20分、あと10分、と時間ばかり気になります。
ところが先日、同じように自転車をこいでいるときに時間があっという間に過ぎたことがありました。
ふだん40分間を一つの目標にしていますが、その時はそれも忘れて15分ぐらいオーバーしてもまだ自転車をこいでいました。
その時ちょうど自転車に取り付けられているテレビでお笑い番組をやっていたのです。面白かったのでつい見入ってしまい、小1時間もこいでいたというわけです。
楽しくて時間がたつのも忘れてしまい、はっと気がつくとえらく長い時間がたっていた、といったことをもとに浦島太郎伝説はできたのかもしれません。
竜宮城は、何10年もたったことを忘れるぐらいのよっぽど楽しいところだったのでしょうね。
梅雨真っただ中、晴れ間にはすっかり真夏の様相になってきました。
もうすぐで今年も半分が経過しようとしています。そして開業してから9か月がたちました。
早いような、そうでないようなそんな半年間でした。
この半年で、いろいろな体験をしました。それこそこの年になって初めて知ったようなこともありました。
それもこうして自分のクリニックを開業したからこそ体験できることと思い、すべてを受け入れるように心がけています。
私ができることは日々の診療を丁寧に着実に行っていくことだけなのだ、と自分に言い聞かせて毎日の診療にあたっています。
先日、スタッフと食事会をしましたが、クリニックの近くの閑静な店を選びました。そこは創業が大正12年、建物も明治時代に建てられたものだそうで、その伝統の重みにただただ圧倒されました。
自分のクリニックもいつか開業何十年といえるようになればいいなと思いました。
次回の開業報告はおそらく1周年の頃になると思います。
先日、あるパーティーに呼ばれていきました。
司会の人に、パーティーの最後の締めの挨拶をしてほしいといわれ、しかも美容外科にまつわるエピソードなどもちょっと話してほしいといわれていました。
なんとなくいやな予感はしていたのですが、いちおうお引き受けし、自分なりに結構はりきって準備もしていたのです。
最後の挨拶というのは辛いもので、自分の番がまわってくるまで(結局パーティーの間中)なんとなく落ち着かない気持でいなければいけません。
食事も終わり、いよいよ自分の番。学会の発表や結婚式でのスピーチの経験はあるので話をすること自体は問題ないのですが、聴衆の反応が一番気になるところです。
一般の人から見ると(特に女性には)「美容外科」はとにかく興味があって、そういった好奇心にこたえようと興味の湧きそうな話題をこれでもか!というぐらい連発したのですが、それに対する反応が想定した反応と全く違うのです。ようするに「無反応」(こういった場面でもっとも辛い!)なのです。
その原因はあとでわかったことなのですが、出席者の平均年齢が75歳以上と高く、「若く美しくなりたい」というよりは「健康で長生きする」ことに興味がおありな年代で話題がかなりずれていたからのようです。
結局「美容」に興味があったのはパーティーの司会をしていた人ぐらいで、その他の人にはなんの興味もなかったようです。
パーティーが終わった後、家にかえってもその日1日中落ち込んでいました。
先週続けて脂肪吸引手術が何件かありました。大量脂肪吸引となった患者さんもいました。
脂肪吸引の手術は、術者には繊細さも必要ですが体力もいります。来年には50歳になろうとしている私ですが、このような手術がいつまでできるのか少し不安です。
以前からそうなのですが、広範囲の脂肪吸引手術をすると私自身の体重が減ります。先週1週間で体重が71.5キロ→69.5キロまで2キロほど減りました。まさに「身を削る」ような手術です。
油断をするとやせてしまう体質で、以前よりはやせにくくはなりましたが、今でも太るより痩せる方が簡単です。
昔から痩せている割に食べる量が多い方です。しかも、健康によくないと分かっていても一気に早食いをしてしまいます。医者はそういう人が多いと思いますが、その中でも早い方かもしれません。
どうしてそんなに早く食べるのですか、と聞かれると次のように答えています。
ゆっくり食べていると少しで満腹になってしまうので、満腹を感じる前に食べられるだけ食べておこうという考えです。
歩くのも人一倍早いです。町中を歩いていても他人に抜かれることはめったにありません。
どうしてそんなに早く歩くのですか、と聞かれることが多いのですがそれにはこう答えています。
自転車に乗るのに、早く漕ぐのとゆっくり漕ぐのとどちらがバランス取りやすいかといえば早く漕ぐ方がバランスを取りやすいのといっしょですよ、といいます。
ゆっくり歩くと何となくふらふらするような気がするのですが・・。
どちらもあまり人にはお勧めできない「へんな癖」です。
徐々に人気が出てきている「シルエットリフト」ですが、我がクリニックでもシルエットリフトを受けていただいた患者さんが増えてきました。
1か月後の「美容外科学会」でもシンポジウムで「ミッドフェイスリフトにおけるシルエットリフトの有用性」という題目で発表することになりました。
せっかくシルエットリフトを使用するのであれば、リフトアップ効果を最大にしたいものだと考え、それなりの工夫をしてきました。
ミッドフェイス、口角の挙上にはかなり効果があることが分かってきましたが、逆にマリオネットラインやあごのたるみにはなかなか効果を出しにくいことを実感しています。
手術中、シルエットリフトが本当に効いているかどうかを確かめるためにかなり強い力でけん引してみるのですが、垂直方向に入れた糸は簡単に抜けてきてしまいます。
シルエットリフトは最大の牽引力が得られるまで何回も挿入、牽引を繰り返すことができるのが利点だということにも気付きました。これは考案者のDr Pizzamiglioも言及していません。
最近、コーンの数が10個から8個に減らされたようですが、8個でも私は多すぎるように思います。コーンに均等に牽引力がかかるようにするには4~5個が最良とかんがえています。
患者さん側からすると切らないでリフトアップできる「シルエットリフト」は魅力があると思いますが、私の意見では他のリフト系の手術の補助として(特にミッドフェイスや口角の挙上)使用するのが一番効果があると思います。
ここを間違えないようにしないと、シルエットリフトも過去のスレッドリフトと同じ運命になってしまう可能性があります。
最近なにかと話題になるエコカーやハイブリッドカーについて。
「プリウス」は現在、納車までに4ヶ月ほどまたなければいけないほどの人気だそうです。(私は以前書きましたようにそれほど好きではありませんが、そろそろかえたいな~とも思っています)
そんなに人気があるなら、なぜもっと生産を増さないのか、ちょっと不思議ですよね。
ところがそれができない事情があるらしいのです。それはハイブリッドの心臓部、バッテリーの生産に問題があるからとのことです。
ハイブリッドのバッテリー開発の責任者から直接聞いた話では、ハイブリッドに使用するバッテリーの生産で安定した製品を作ることが難しく、10台のうち4台は使い物にならないのだそうです。
ここに時間、コストの両方で、かなりのロスが発生してしまい、生産台数とコスト両面で限界が来てしまうわけです。
いまのところ究極のエコカーと考えられているハイブリッドカーですが、その生産段階ではかなり非効率性な面があるようです。
前々回、自動車税値上げのことを書きましたが、世の中のいっせいに「エコ」志向に少々戸惑いとうんざりもしています。
古い車を廃車にしてエコカーに買い替えることがはたして環境保護につながるのか、私にはわかりません。
またレジ袋を拒否することが、それほど環境保護につながるのか、どうしても納得ができずにいます。
ゴミの分別が本当に環境保護につながるのかを説明してもらったことがないままに、習慣で何となく分別しています。
ジュースの缶を分別してゴミ置き場に置いておくと、どこからともなく自転車で現れた人がこれ以上持てないほどの缶をもち去っていきます。
他にもっと大事なことがあるような気がしてなりません。電気のつけっぱなし、過剰包装、大量の食べのこしなど、一向に改善されずにいます。信号がこれほど多い国もないのではないでしょうか?
自動車税の増税ですっかりぼやきぐせがついてしまいました。申し訳ありません。
ところで環境論議は別にして、あのエコカーのスタイルにはどうしても生理的に受け付けないのは私だけでしょうか。
昭和30年代生まれにとって、車はやはりスタイルがいちばんで、次は走り、燃費は2の次なのです。
最近つくづく感じていることは日々の診療でカウンセリングに時間がかけられることのありがたさです。特に手術希望の患者さんについてです。
患者さんの要望を聞き、必要な手術の説明を十分にお話しして、具体的にどんな手術をするか患者さんと決定、というところまでで1時間、場合によってはそれでも足らないこともあるぐらいです。
そんな私の診療スタイルを貫くことができているのも、いまのところ安定した経営ができているからと考えます。
美容外科の健全な診療には健全な経営が欠かせない、ということは開業前からずっとかんがえていたことで、それをまさに実感している毎日といえそうです。
カウンセリングではまず患者さんのお話を聴かせていただくわけですが、このときに気をつけているのは「まず手術ありき」でお話を聞かないようにしていることです。その患者さんに本当に合った手術方法はなんだろうか、そもそも手術が必要なのだろうか、などと考えながら話をきくようにしてます。
カウンセリング時に経営のことが頭をよぎると、どうしても「手術ありき」で患者さんの話を聞くようになってしまいます。手術を決めなければ、という邪心が患者さんの本当の要望を聞こえなくしてしまうような気がします。
そうして患者さんのお話を聞いたあと、こちらから手術方法を提案します。
その時にも「健全な診療には健全な経営」が重要であることを実感します。
続きは次号にかきます。