シンプルな手術法で患者さんの8割を満足させられる手術とは?
すでに過去のブログで書いてきた方法が大部分ですが、ここでまとめていきたいと思います。
まず「上下瞼の手術」から
埋没法、切開法(挙筋腱膜固定)、眼瞼下垂手術、隔膜前脂肪切除、眉下切開、目頭切開、目尻切開、下眼瞼下制術、下眼瞼脱脂術、下眼瞼切開術、上眼瞼脂肪注入術、下眼瞼脂肪注入術
瞼に関してはまずはこれら一つ一つで確実に結果が出せるようにすることが先決です。
これらで安定した結果が出せないうちに、これら以外の手術をするのは身分不相応です。
これらで確実な結果を出して術後にトラブルを起こさないようになるまでに普通10年はかかります。
まず上瞼の中で、埋没法は美容外科の手術の1丁目1番地です。
これを覚えなくして美容外科の手術は始まりませんし、これ自体がシンプルな方法です。
しかしこの手術でいかにトラブルを減らして患者さんの満足度を上げるかを考えることは重要です。
この手術の優れている点は、術前にかなり正確にシミュレーションができる点です。
ブジーを用いて二重の状態を作って患者さんに診てもらい、その時の患者さんの反応を観察します。
二重幅、瞼の厚み、ラインのでき方(食い込み方)など、その時の状況をできるだけ客観的に説明します。
患者さんは漠然と見ているだけなので、こちらからはできるだけ状況を細かく説明します。
よくないと思われることでもどんどん指摘します、例えば二重にするとかえって瞼が厚ぼったく見えるようになってますよね、とか。
セールストークなどは一切いいません。
患者さんが嫌そうな顔をすれば、埋没では希望通りにならないかもしれないことを正直にお話しします。
その理由は、埋没法によってできる二重を実際にみてもらって、それを基準にして潜在的に患者さんが希望している二重を具体化したいからです。
要するに埋没法には試金石的な役割があり、その患者さんに埋没法で得られない要望があるかどうかが埋没法によって逆に明らかになる、ということです。
そのほかにも埋没法をぜひマスターしなければいけない理由がありますが、最後にまとめておきます。
二重切開法については、瞼板に癒着させて二重をつくる手術ではだめです。
何故なら結果が不安定だからです。きちんと検診をしているドクターならこの方法ではだめだということを知っています。
挙筋腱膜の操作が自由に行えるようになって初めて上眼瞼の手術を自分でコントロールできたといえます。
瞼板法では癒着などという神様しか結果がわからないような現象に運命を託す手術で、これでは術後のトラブルを避けることはできません(術前にお約束した結果を具体化できない手術はトラブルのもとだからです)。
ここまでのまとめ
1埋没法のマスター(術後の腫れが少ない方法を選択 糸が瞼の中でスクエアになる方法が望ましい、締め込みが少ないことで術後の腫れが少なくなる)(結び目をできるだけ小さくするが、術後に見つけやすいことが重要 埋没法の最大の利点は術後に戻せることだから)(取れない埋没法とか結び目がわからない方法というものがいかにばかげているか、それはファンタジーで現実にはトラブルの元になります)
2切開法のマスター(挙筋腱膜を知らずして上瞼を触るべからず アクセルとブレーキのない車に乗るようなものです)(自分でコントロールできない車に乗ったらあとは目的地に着くには道路の状態に身を任せるしかない、運が良ければ目的地に着くこともあるかも)(まずは開瞼幅を自分でコントロールできるようになるまでは二重幅がどうのこうのいうのは無意味)(なぜなら開瞼のぐあいで二重幅などどうにでも変わってしまうから)
やっとこのシリーズも10回目となり、待ちに待った?手術の話です笑。
本題の前に、私の個人的な話をします。
それは私の大学受験時代までさかのぼります。
私が卒業した高校は、たいした進学校ではなく受験勉強も各自に任されていました。授業も一般的な教科書を使って普通の授業でした。
その授業だけでは医学部受験には対処できないものでしたので、受験意識の高い友達とかと情報交換しながら試行錯誤でした。
塾に通っている友達もいましたが、私は生来の塾嫌いでひたすら自宅で受験勉強をしていました。
そうかといって大した体力もなく夜は12時前に寝ないと睡眠不足で調子を悪くするので、いかに少ない時間で効率のいい勉強をするか、ということばかりを考えていました。
特に数学は受験の山になる科目で、ここでいい点を取れるかどうかが合否に大きく影響します。
その時に身に着けたのが、最小記憶勉強法です。
これは数学の問題を解くときに、一番応用の利く解答法を身に着けることに集中するというものです。
問題を解くときに、その考えに沿って解いていけば答えが得られるという自分なりの「原則」をいくつか確実に身に着け、それを応用することで全体の8割ぐらいの問題をその場で考えて説いていこうという解答法です
残り2割の問題はその原則を使って考えても解けないので、最初からあきらめるという潔いやり方です。
そうすれば、覚えることは最小限で済むので、暗記が必要なほかの科に時間を回せます。
今でも私が美容外科の手術を考えるときはこの方法を応用しています。
イメージを確実に実現化でき、なおかつ長期間その結果を維持できるという代表的な手術方法をいくつか身に着けて、それだけで患者さんの8割が満足していただけるようにする、というシンプルな方法です。
詳細は次号で
基本的な診療姿勢を身に着けることが大前提と書いてきました。
そのうえで、次はいよいよ手術手技そのものになります。
大事なことは、手術結果が「必ず自分の思った通り」に仕上がり、それが長年維持される、そういった手術をすることです。
この段階で一気に患者さんの希望に合わせるところまで仕上げる、高度なゴールにたどり着くのはなかなか難しいので、まず自分の思い描いている結果を必ず実現化できるような手術をすることに全力投球です。
そのためには、自分の中で目指すイメージが確立されていなければいけません(何度も言いますが、この段階では患者さんの希望に左右されていはいけません、あくまで自分がいいと思う術後イメージです)。
これがない状態で手術に臨むのは、目的のない旅をするようなものです。
自分の中で設定している目的がなければ、自分の手術がよかったのかだめなのか判断基準をもてません。
これは瞼、鼻、輪郭、ボディすべての手術に共通しています。瞼なら二重の形や幅、瞼の厚みなど、鼻なら高さや形、輪郭もフェイスライン、ボディならボディライン、そのすべてで自分の中で思い描けることが必要です。
そのイメージをどこから得るかですが、対象は日常的にどこでも見つけられます。
身の回りにいる人の顔から、テレビやネットでいろいろな人の顔を見て、などいくらでも対象はあります。
要するに日ごろから意識して人の顔や体を見て、イメージ力を高めるということです。
そうやって、自分の中ですぐに術後のイメージが持てるようになればいよいよそれを実現する手術を考える段階になります。
手術手技の基本が身についていれば、次は「術後検診」をきちんとすることを心掛けます。
これは当然行ってきていることだと思いますが、美容外科では最も重要です。
その理由はわかりますよね、患者さんがどのように手術結果を評価しているかは直接患者さんにうかがってみないとわからないからです。
そのためには、自分が行った手術がどのようであったか記憶していることが大事です。
美容に限らず手術というものは一つとして同じ手術内容で行うことはありません。
手術記録を必ず書くことです、特に最初は細かいことまできちんと書く癖をつけましょう。
検診の時にそれを見直して、自分が気になっていたことを頭において検診をします。
もちろん、患者さんの評価をできるだけ冷静に客観的にうかがうことはいうまでもありません。
きちんと検診することは、患者さんの安心にもつながりますので1石2鳥です。
それと術後2週間 1か月 3か月場合によっては6か月1年と経たないと本当の結果がでないことがとても多いのです。
それを術者が実感としてわかっていることがとても大事です。
そういったことをわかっているドクターから説明される言葉には患者さんは安心させる力があります。
そういったことを行わないでただ「まだ腫れてますから待ってください」といっても患者さんに伝わりません。
日頃の検診を大切にする姿勢は、結果的にトラブルを防ぐことにもつながります。
逆に私は術前に患者さんにこういいます、術後の検診においでになれないのであれば責任をもって手術することはできませんのでその場合は手術をお引き受けしません、と。
美容外科で術前にここまで言い切れるまで、日ごろから基本的な診療姿勢を身に着ける努力をしたいものです。
美容外科のある意味理不尽なところを書いてきました。
このブログを読んでいただいているこれからの美容外科医に、共感してくれる医師がいることを期待して書いています。
私は患者さんの期待している結果やイメージを実現化することが美容外科医の使命である以上これに真正面から対応していくことが正道だと思っています。
ただしいろいろなやり方があり、私の考えもそのうちの一つに過ぎないと思っています。
トラブルを避けるために二つの面から考えていきましょう。
一つは、医師自身の面から。もう一つは患者さんとの関係という面から。
患者さん側に問題があることもありますが、患者さんに考えを変えてもらうことは現実的ではありませんのでそこはスルーしましょう。
1医師自身の面で考えること
大前提として手術手技が確立していることがあります。
とくに基本的な手術手技です、これが不安定で自信がないとなるとトラブルを避けようと思っても無理です。
難しいことではありません。
組織を丁寧に扱うこと、解剖学的な知識が十分あること、縫合の基本ができていること、などです。
どれも研修期間の2年間に身に着けることができるものばかりです。
完全ではなかったにしても、研修期間が終了した段階からでも常にブラッシュアップしていかなければならないし、心がけ次第でできます。
要は、いつもこのことを忘れないようにしておくことです。
初めての手術に臨む場合は、いつも事前に解剖を確認する癖をつける、というちょっとしたことですが、これは習慣ですので研修医の時からこころがけましょう。
縫合も常に層を合わせることを意識していれば、縫合のない手術はありませんのでいつでもブラッシュアップできます、要は日ごろの心がけ次第です。
鑷子で強く皮膚をつかまない、などは息をすることぐらい日常的なものとして心がけることです。
簡単なことですが、案外できていないドクターを見かけますし、修正などで来院された患者さんを拝見すると、あぜんとすることがあります。
乱暴な扱いを受けた傷は皮膚表面 皮下にかかわらず厚い瘢痕ができます。
こういったことができないで、いくら小手先のことでトラブルを避けようと思っても、ざるで水をすくうようなもので無駄な努力です。
もしこういったことが不安であれば、形成外科研修をもう一度どこかでするか、教科書を見直してください。
教科書は、初歩で読んだ時よりもある程度経験を積んでから読んだ方がその価値がわかることが多いですし、そういった教科書が優れたものともいえます。
安定した手術手技が身についてることができていれば次の段階に移りましょう。
何回かに分けて書いてきました「フェイスリフト騒動」の顛末でした。
結局その騒動の原因は、患者さんの期待していたイメージと我々が持っているイメージの大きなずれでした。
患者さんの「術後の満足」が美容外科手術の成功である以上、このフェイスリフトは失敗、ということになります。
私自身がまちがっていた、ということです。
医学的手術的に落ち度がない手術で、そこそこ結果が出ていて後遺症など一切なく大部分の人が成功と思っても、です。
いいですか・・これが美容外科の厳しい面です。
I said to myself, this is the buisiness we’ve chosen.(The Godfather Part2)
これから美容外科を目指す若い医師の皆さん、これがあなたたちが選ぼうとしている美容外科というビジネスです。
つまり、いくら自分が正しいと思って行った診療行為でその結果が出せたとしても患者さんの期待している術後のイメージと違えば、それは間違いだということです。
つらい修行の末にやっと身に着けた手術手技でいい結果を出せるようになったとしても、患者さんの期待と違えばそれはだめなのです。
逆に、ちょっとこれは我々が常識で考えて間違っている診療行為でも患者さんがその結果に満足していれば多くは成功となります。
そうやって美容外科医としての評価がなされるのです。
どうですか?理不尽だと感じますか?
まじめなお医者さんほど「やっぱ美容外科は嫌だな」と思うかもしれませんね。
他の科でこんな形で医師としての評価がなされる科はないです。
反対にそんな細かいこと考えない図太い神経の医師ほど今の美容外科に向いているのかもしれません。
そんな現実に対して私の意見や提言を次回以降に書いていきます。
泥試合になってしまった「フェイスリフト」騒動の結末です。
実は私自身、その仲介スタッフにゆだねてから一度もその患者さんにお会いしていません。
ただその後気になって何度もスタッフに様子を聞いていました。
その話では、「あの患者さんにはお姉さんがいて、そのお姉さんがたきつけているようです」ということでした。
そのお姉さんという人は、以前にほかのクリニックでフェイスリフトを受けていてその結果と今回の妹の結果があまりに違うから失敗と決めつけているようでした。
そういわれてから思い出したのですが、カウンセリングの時に一度だけ付き添いでそのお姉さんに会っていました。
そのお姉さんの顔はかなり引きつっていて、いわゆる「仮面用顔貌」、昔のフェイスリフトのやり方でよくみられるお顔でした。
今でいうと、テレビに出ている年配の歌手の方や女優の方で「うわっ、この人なんか顔がおかしくなっている!」と思う人、いますよね、まさにそれです。
なぜそうなるかというと過去の記事で書いてきましたが、皮膚だけで思いっきり引っ張るとたるみは取れるのですが、表情までなくなってしまうからです。
以前はよく行われたフェイスリフトです(今でもご年配のドクターでこのようなやり方でされていることもあるようです)。
まさにそのお姉さんも昔から有名だったある美容クリニックそのやり方のフェイスリフトを受けていたようです。
姉妹にとっては、その昔のフェイスリフトのやり方が正当で、私のようなSMASで引き上げ表情が損なわれないのは「邪道」になるのです。
以下次号で
前回の続きです。
写真を見せたときの患者さんの言葉、今でも忘れません、30年近く前の出来事です。
「ほーら、やっぱり全然変わってない、まともな手術してないじゃないの!やりなおせ!」
唖然としました、この場でこの2枚の写真をお見せできないのが残念ですが、100人の人に見せたら100人の人がいうと思います、「変化はありますね、たるみも軽減されてます」と、しかも「自然な仕上がり」と。
ところが当の本人は頑として認めません。
挙句の果てに、「こんな写真、インチキでしょ!」と吐き捨てるように言い放ちました。
ここまでくると、患者さんと私の2人だけでは解決できないし事態はどんどん悪くなります。
このとき務めていたクリニックには、このような状況の場合の対処法はマニュアルで決められていたようで、仲裁役の専門カウンセラーが存在していてそのスタッフに事態をゆだねることになっていました。
そのスタッフに双方の言い分を聞いてもらって、できるだけ中立な立場で事態を収拾してもらうような仕組みで、直接私と患者さんが話をしないように言われました。
私は最初のうちは腹が立って冷静さを失っていましたが、そのスタッフを通して話を聞いているうちに、その患者さんの言い分がおぼろげながら見えてきました。
その内情については次号で
前回の続きです。
1か月検診の患者さんの口から出た驚愕の言葉とは・・・
「全然変わってない!、ちゃんと手術したの?なにも変化ないじゃない!」
というものでした。
これが私が美容外科医になって、初めて術後の患者さんに言われた厳しいお言葉でした。
さすがにこちらも黙ってはいられません、反論しました。
「術前に説明したSMASという筋膜を引っ張ってたるみをちゃんととって余分な皮膚は切り取りました。たるみがなくなっているのがわかりませんか?」
まだ若かった私は、すこし憮然とした感じでこう返答しました。
こうなると向こうも買い言葉に売り言葉、さらに語気を強めて「ぜんぜん変わってない!やりなおせ!」とどなり声に変わってきます。
この段階では、まだ私のほうに多少の余裕がありました。
何故なら患者さんの術前の写真がきちんと撮ってあって検診時の写真と比較できるように用意してあったからです。
その写真を自分でみて確認し心の中で「これを見せれば、患者さんは納得するに違いない!勝った!」と心の中で思いました。
ところがその写真を見たときの患者さんの言葉がさらに驚愕でした。
以下次号で
前回から始めたこのシリーズは、これから美容外科を始めようと思っている主に形成外科研修を修了しているドクター向けに書いています。
記事の大部分は患者さんが読んでも参考になると思いますが、中には意外に思われたり不愉快に感じる部分もあるかもしれないことをお断りしておきます。
それと記事の内容は私自身がいろいろな美容クリニックで働きその後に自分で開業して実際に診療してきた経験に基づいています。
もう一つ、これまでにも何回も書いてきましたが、トラブルへの対処は医師の資質に大きく関係していますので、私の経験がすべてのドクターに当てはまるとは限りません。
それどころかむしろ極少数の気の弱い(笑)、そのくせ美容外科の手術には興味津々といった変わり者のドクターにしか参考にならないかもしれません笑。
私自身、某美容外科クリニック勤務時代から手術は比較的多くしてきましたが、覚えたての手術をした日の夜はなかなか眠れないこともありました。
手術の結果が気になってしかたなかったからです、あの時こうしてたらどうなったかなとかあれはあれでよかったんだろうか、とか。
30代後半の初期段階では、やはり手術そのものが今から思うと稚拙で反省することも多かったように思います、そのころの患者さんには多かれ少なかれご迷惑をおかけしたかもしれません。
ところが自分でいうのも変ですが、運に恵まれていたのか生まれ持ったビビり性格のおかげか大きなトラブルを生むことなく、手術件数の割には結果的に患者さんに大きな障害を残すことがなかったのはもちろんちょっとしたトラブルもほとんどなく無事に過ごしていました。
そんな中で唯一印象に残っている患者さんがいます。
フェイスリフトでたるみを取る手術を受けられた患者さんです。そのころは私は美容外科医専属になって2年ぐらい経過していて少し手術に自信を持ち始めた時期でした。
その60代の女性は頬のたるみが目立っていて本人もかなり気にしていました。
ここは少し自信を持ってきたSMASを利用したフェイスリフトの出番だと思って勇みこんで手術を行いました。
その結果は、自分でいうのもなんですが、かなりたるみが解消されて誰が見ても結果が出ている状態でしたし、引きつりや顔のゆがみもなく自然な表情が保たれていて・・成功した、と思いました。
自信をもって1か月検診時に患者さんに対応すると、思いもよらない返答が返ってきたのです。
続きは次号で